うわっ。

言いきれる自分がかなりカッコイイ。

白いユニフォームを土で汚して、坊主八割の部員の中で短髪の黒髪のまま4番背負って。

あぁ、アイツにしか目がいかない。

小学校からの腐れ縁だったのに、いつからこんな好きになったんだろ。

土に汚れたアイツがひどく眩しかった。




「何寝てんだ」

ポカッと頭に衝撃を感じで顔を上げたら、正面に制服姿のアイツがいた。

「……試合は?」
「あ?見てたのか」
「途中で寝たけど」

俺の前の席に当たり前の顔して座る。

「勝った勝った、あのまま逃げ切った」

嬉しそうに笑うクセに、なんだか大人びて見える。

あれ?

コイツ、こんな顔してたっけ?

見慣れたアイツの顔なのに、まるで別人を前にしている気がした。

いい意味で。

「ん?どした?」

ボケッと見つめていたようで、アイツが不思議そうに俺の瞳を覗き込んで来た。

鼻をつくのは汗と土、そしてアイツの匂い。


「好きなんだけど」


気が付いたら口が勝手に動いていた。

スルリと自然に吐き出された真実。

え?

ちょっと待て。

俺、今なんて言った!?

「うわぁぁぁっ!!」

ガシャンと音を立てて椅子から転げ落ちた。

痛い。

いや、そんなのはどうでもいいんだ。

重要なのはそんなことじゃない。

「ち、ちがっ、変な意味じゃなっ……いや、だからっ!!」

全身が熱い。

ハイスピードで存在を主張する心臓が、とてつもなく苦しい。

しまった。

何言ってんだよ、俺。

ガクガクと震える膝で立ち上がり、鞄をひっつかむ。

アイツの顔なんか、見れるはずもなかった。

「お、俺…もう帰るからっ、じゃなっ!!」

なんとかそれだけ言葉にすると、俺は一度もアイツを振り返らないまま、教室を飛び出した。

ヤバいヤバいヤバい。

バレたっ!

違うっ!!

バラしたっ!!!

ダダダダダっと物凄い足音が、何故だか遠くに聞こえる。

誰もいない廊下を、全力疾走。

頭が沸騰しそうだ。

俺は末期だ。

ぶつけた腰や尻は痛むけど、俺が足を止めることは無かった。


END.



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