僅かにペースが早くなっていたが、葉瑠には気付けない。

自分も彼の後を追い、夕焼けを背にした。

「……足、大丈夫なのか?」
「えっ!?」

一希の呟きに葉瑠の心臓は飛び跳ねた。

「な、なんで知ってんだよ?」

上擦る声に訝気な眼差しを投げてくる友人には、きっと赤面しているのが分かったのだろう。

軽く笑うと一希は葉瑠の右足を軽く蹴った。

「スライディングしたんだろ?いいじゃん、体育でそこまでするヤツ、カッコイイ」
「……あ、う、ども」

どうやら頬を染めた理由を勘違いしてくれたようで、葉瑠はこっそりと息をついた。

しかし、おかげで余計な思考が戻って来てしまった。

優しい伏見。

大人な伏見。

答えの出ない問題が、頭の中を支配する。

「……」
「……」

沈黙。

気まずいようなそれではなく、お互いの意識が各々の内側に向かっている時のもの。

二人は気付かない。

自分の発した何気ない一言が、クラスメートに爆弾のような衝撃を与えたことに。

空はもう、薄紫に暮れていた。


END.



- 10 -



[*←] | [次#]
[back][bkm]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -