◆
慌てて顔をそらす。
危ない。
直視なんかしたら、ヤバいんだよ。
お前。
ふぅ、とため息が落ちて、処置の終わりを知る。
「………」
「………」
体育に戻らなきゃ。
分かってる。
けど、なんだよ。
なんなんだ。
オレ。
くそっ。
「……戻る」
絶対に目を合わせないまま、オレは椅子から立ち上がった。
「おい」
背後から声が追いかけて来る。
やめろよ。
「また、何かあったら来いよ」
やめろって。
返事をすることもせず、乱暴にドアを開けて保健室から逃げ出した。
やめろ。
知ってるんだ。
分かってるんだ。
お前がそう言うのは。
お前が優しくするのは。
オレだけじゃないってことくらい。
分かってるんだよ。
クソ保健医が。
だから。
オレを見るな。
勘違いしそうになる子供なオレを。
どうか見ないでくれ。
END.
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