思考回路は完全にフリーズした。

好き?

好き?

好きって何だ。

「うわぁぁぁっ!!」

眼前のアイツが顔を真っ赤にして椅子から転げ落ちた。

なんだ、この動揺ぶりは。

叫び出したいのは、俺だ。

「ち、ちがっ、変な意味じゃなっ……いや、だからっ!!」

じゃあどういう意味だ。

聞きたいのに、まるで話し方を忘れてしまったみたいに、俺の口は開かない。

他の器官は動きを止めて、代わりに心臓だけが異常な速さで存在を主張する。

もう一回言え。

じゃないと、俺は正しく理解できない。

友情なんだろ?

お前が言うのは幼馴染としてなんだろ。

だったら、そんなに慌てるな。

俺が都合よく解釈してもいいのか?

ほら、さっさと言い直せ。

「オ、オレ……もう帰るからっ、じゃなっ!!」

言うなり、アイツは猛スピードで教室を飛び出した。

は?

おい、ちょっと待て。

そこで逃げるか。

普通。

つまり、なんだ。

アイツが、俺を好き?

否定しないなら、言い直さないなら。

俺はどう解釈したものか、茜が紫に変わるまで一人硬直したままでいた。


END.



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