◆
思考回路は完全にフリーズした。
好き?
好き?
好きって何だ。
「うわぁぁぁっ!!」
眼前のアイツが顔を真っ赤にして椅子から転げ落ちた。
なんだ、この動揺ぶりは。
叫び出したいのは、俺だ。
「ち、ちがっ、変な意味じゃなっ……いや、だからっ!!」
じゃあどういう意味だ。
聞きたいのに、まるで話し方を忘れてしまったみたいに、俺の口は開かない。
他の器官は動きを止めて、代わりに心臓だけが異常な速さで存在を主張する。
もう一回言え。
じゃないと、俺は正しく理解できない。
友情なんだろ?
お前が言うのは幼馴染としてなんだろ。
だったら、そんなに慌てるな。
俺が都合よく解釈してもいいのか?
ほら、さっさと言い直せ。
「オ、オレ……もう帰るからっ、じゃなっ!!」
言うなり、アイツは猛スピードで教室を飛び出した。
は?
おい、ちょっと待て。
そこで逃げるか。
普通。
つまり、なんだ。
アイツが、俺を好き?
否定しないなら、言い直さないなら。
俺はどう解釈したものか、茜が紫に変わるまで一人硬直したままでいた。
END.
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