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瞬間、溶けてしまいそうなほど熱を孕んでいた身体が、一気に冷えた。

先刻感じた、冬風に似た孤独感とは種類を別にする、もっと暗く絶望的な寒さに頬が強張る。

自分自身の罪を、思い出したのだ。

例え調査のためとは言え、千影は彼を騙していた。

半年もの間。

そうして、自ら正体を明かすでもなく、穂積が見つけ出してくれることを、願っていた。

光が千影だと、気付かれることに怯えたくせに、気付かれないことに傷つきもしたのだ。

何て、欲深いのだろう。

何て、醜いのだろう。

嘘をついておきながら、穂積の努力を望んだ自分は、あまりに卑劣だった。

「自己嫌悪に浸っている余裕があるなら、俺は待っていなくてもいいのか?」
「え?」

果てのない自責の海に落ちかけた少年は、思考に割り込んだ男の声で我に返った。

「お前が来ないなら、俺から行くだけだ。あぁけど、そうなると椅子は会長席を使うことになるな。その椅子だと一人しか座れないから、お前は俺の膝に座ることになるが、いいのか」
「会長……」

にやりと綺麗な顔に人の悪い笑みを乗せた男は、まるで本当の魔王にも見えたが、千影は少しだけ泣きたくなった。

優しい人だ。

嘘をついていた千影を許しただけでなく、自責に落ちることがないようにと支えてくれる。

千影を正面から見つめて、目を離さずにいてくれる。

苦しまぬように、悩まぬように、息を潜めて嗚咽を堪えることがないように、いつだって掬い上げてくれる。

優しくて、甘い人だ。

「だから、それは俺の名前じゃないだろう」
「そう、ですね」

痛みを感じるほどに冷えていた心が、熱を取り戻す。

心臓が燃えるようなそれではなく、身体の根幹から込み上がる自然なぬくもり。

千影の心に自然とついた炎のあたたかさが、心地よい甘さをのびやかな四肢に行き渡らせる。

幸せな笑みをひっそりと漏らすと、千影は彫像のように動かずにいた足を、踏み出した。

そうして渋っていたのが嘘のように、あっさりと穂積の前まで到達し、すとんっとその隣へ腰を下ろしてみせた。

突然、素直になった少年に、穂積が僅かに目を瞠る。




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