◇※




そうして若い肉体は穂積の手招きを断れなかった。

緩く行き来する爪が、完璧に立ち上がった乳首に引っ掛かる。

爪の先で弄ばれれば、じんじんとした熱に苛まれて背が反り上がった。

腫れた先端を穂積の手に押し付けるような形になる。

「っ……!」

己の信じられない反応にカッと頬が朱に染まる。

恐る恐る見上げれば、黒曜石の瞳が意地の悪い輝きで仁志の双眸を見つめ返した。

「お前、未開発か?」
「っるせ! 俺はバリタチなんだよ!」
「言い訳にならない。遊んでるように見えて意外に古風だな」

ネコに悪戯を仕掛けられていないのは恥じることでもないはずなのに、改めて指摘されると物凄く居た堪れないのは何故だ。

まるで単調で平凡なプレイしかしていない、と馬鹿にされた気分になる。

「っとにかく、いい加減にしろ! もう……うぁっ」

乳首を襲ったねっとりとした感触、湿り気、張り付いたシャツの向こう側で蠢く弾力のある熱。

ブレザーを開いて胸に顔を下げた穂積がそこを舐ったのだ。

尖らせた舌で突かれたと思えば、押しつぶすように熱さで包まれる。

甘く歯を立てられて堪らず息が乱れた。

「っ、く……」
「お前、さっきから色気のない声を出すな」
「なら、とっとと放せ! 蹴るぞこら!」
「出来るならやってみろ」

これ見よがしの挑発に裏がないわけがないのに、理性が崩れつつある仁志は馬鹿正直に乗ってしまった。

下半身に纏わりつく気だるい熱を振り払うように、勢いよく右足を蹴りあげた。

それをいとも簡単に受け止めた穂積は、仁志の左足を自分の体で抑え込んでしまう。

「お前、本当に頭悪いな。いっそ哀れだぞ」
「あぁ?」
「持ち上げた足を取られたら、開かされるのは当然だろう」
「っ、ん……!」

仁志の足を捕まえているのとは別の手が、開いた内腿を撫で上げる。

足の谷間を卑猥な手つきで擦られ腰の奥がズクリと重くなる。

「ちょ、待て、待っ……ぁ」

ゆるゆると柔らかな刺激はもどかしく、仁志の内側に灯った火種は風に煽られるが如く見る間に燃え上がった。

硬さを確かめるように穂積の手がそこを包み込み、スラックスの上からぎゅっぎゅっと揉みしだく。

「はっ、ま、マジで……なぁ、マジでヤバいって……くっ」
「お前の声じゃ萎えるな。少し黙れ、気が削がれる」
「勝手なことほざいてんじゃっ……!」

下肢への刺激を止めることなく身を倒すと、穂積は再び胸元に舌を這わせた。




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