木崎の最もな指摘に、光も同意を示す。

学院のある県と不良グループが存在した県は、同じ関東でも隣接はしていない。

間に一つ挟むと言うのに、なぜわざわざ出向いたのか。

以前から疑問にしていたことだった。

光が彼を見たのはゴールデンウィークのころ。

離れた友人に会いに来たとも考えられるが、どうも引っかかる。

『怪しいだろ、それ』
「傍で張ってるけど、今のところ妙な動きはなし」

そう口にした少年は、喉に妙な引っかかりを覚えたものの、意識的に無視をした。

「ゴメン、まだ上手くポジションが作れてなくて、あんまり情報はないんだ」
『まだ一ヶ月だろ?焦らず慎重に行け』

明るく諭した相手に、少し気持ちが浮上する。

「ありがと。武文の方は?なんか分かった?」
『中ボスかと思ったが、ただの雑魚を捕獲したぞ』
「は?なにそれ」

要領を得ない発言に訝しげに眉が寄った。

だが、続いた台詞にコンタクトを外した薄茶の瞳が見開かれた。

『インサニティを小売にしてた奴を捕まえた』
「えっ!?それって……」

まさか売人を捕まえただなんて。

驚愕に舞い上がった光に、武文の否定が与えられる。

『あー違う違う、言い方が悪かった。売人からインサニティを買ったやつが、更にそれを小分けにして捌いてたんだよ』
「でも、それなら売人との接触はあったんだろ?」
『残念ながらない。ネット上で取引して、顔は合わせず薬を渡したんだと』

淡々とした説明に、高ぶっていたモチベーションは急降下。

なるほど、それで中ボスでもない雑魚か。

インサニティの特徴は、大本からドラッグを購入した複数の人間が、さらにそれを捌くという点だ。

一番最初に逮捕された碌鳴学院の生徒も、小売にしていた相手から買ったらしい。

いくら小売業者を捕まえたところで、大本に繋がらなければ進展などみられるはずがない。

『一応、ネットの方も間垣に確認させたが、大型掲示板の中で冗談めかしたやり取りがされただけで、何の手がかりにもならない。碌鳴が絡んでるおかげで、警察がサーバーに情報開示を要求することも出来ないからな』

自由に動けるのは何の権限も持たない、光たちだけなのだと、木崎の言葉は伝えて来る。

本当に、間垣が持って来る依頼は面倒なものばかりだ。

ため息をついた光は、ふと気付いたように尋ねた。

「会わないでクスリの受け渡しをしたって、どっかに置いておいたってこと?」

郵送したとも考えられるが、よりリスクを減らすならば回避するはずだ。

差出人を書かなくとも、集荷された場所や包装に残るかもしれない痕跡を考えれば、危険度は格段に下がる。

すぐに返ってくるだろうと思った返事は、しかし中々与えられなかった。




- 88 -



[*←] | [→#]
[back][bkm]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -