そして終わりを告げる。




しばらくの後、校内に響いたアナウンス。

綾瀬の声で告げられた内容は、水軍が他二軍の軍旗を奪取したことによって、サバイバルゲームの終了を伝えるものである。

控え室で光が追い込まれたところからすべてを見ていた歌音と綾瀬は、逸見率いる会計方に指示を飛ばし、水軍に紛れて他二軍を制圧させたのだ。

光を追いかけることに躍起になっていた生徒たちは、気付かぬうちに自軍が負けていたことに驚くよりも、根暗な転校生が三階の窓から飛び降りたこと。

そしてそれを受け止めたのが、彼を〔ゲスト〕指定した張本人である穂積だったことで、ひどく困惑していた。

生徒会長が光を助ける理由が見当たらない。

だがその戸惑いもすぐに、更なる憎悪へと変質することになる。

あの地味な少年が、恩知らずにも穂積を殴ったのだ。

この瞬間、生徒たちの中で一つの仮説が打ち立てられ、そして真実にされた。

慈悲深い穂積様は、大勢の人間に囲まれた根暗ヲタクを不憫に思い助けに来たのだが、醜いヲタクは有難い温情を無碍にした上に、殴りつけるという暴挙を働いた。

これだ。

光を潰せなかった不満は生徒たちの内側に確実にあるが、またしばらくは手を出せない。

なぜなら、この数日後。

補佐委員会の面々は、自分の所属する役員から釘を刺されてしまうのだ。

『長谷川 光に手を出すな』と。

憎しみがどれだけ強かろうと、敬愛する人間の戒めの威力は絶大である。

不本意ながら従うしかあるまい。

校内に不穏な空気を残したまま、サバイバルゲームと言う絶好の機会は、こうして幕を下ろしたのであった。




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