◇
彼もまた、自分と同じように通称だけの人間。
あれは『キザキ』だ。
あれは『キザキ』のジャンプだ。
仁志は確信していた。
だが、同時に否定してもいた。
光とキザキでは、明らかな違いがあるのだ。
男ながら色香を振りまくキザキ。
地味で根暗な容姿の光。
軽いノリで場を盛り上げていたキザキ。
何事も真剣に受け止め、間違いを素直に口にする光。
何もかも、二人は違い過ぎる。
けれど、別人と言うには似過ぎているのだ。
「どうなってんだよ……」
仁志は呆然とした面持ちで、地面に転がった転校生を目に入れ続けた。
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