生徒会の執務施設である鳳桜館は、校舎から少し離れた場所に位置していた。

室内には風景画や季節の花を生けた花瓶などが飾られ、調度品は装飾性の高いものが置かれている。

正門を潜ったときに受けた印象通り、碌鳴館よりも華やだ。

光たちが通されたのは、一階の応接室だった。

勧められたソファへ腰かけると、徐に小鳥が口を開いた。

「改めまして、鳳桜学院の新生徒会長を務めます、三葉 小鳥と申します。こちらは新副会長の新村 祥。現書記も担当しています」
「どうも。そこの金髪馬鹿以外はよろしく」

新村は壁に寄り掛かっていた身を起こすと、仁志だけを視界から除外して笑顔を見せた。

中性的な雰囲気は表情が変化してもそのままで、「彼女」と表現するのが僅かに躊躇われる。

誤解される性別は真逆だが、綾瀬と同じタイプの外見と言えるだろう。

突起物のない喉元だけが、本来の性別を示していた。

「そして、会計の五十鈴 えみりと書記の川神 朱莉です。川神のみ一年生で、他は二年生になります」
「鳳桜生徒会、会計の五十鈴です。どうぞ、えみりとお呼びくださいませ」

ピンクの髪を揺らしながら魅力的な微笑を浮かべる五十鈴の隣では、川神が肩を竦めて座っている。

眼鏡の顔を俯けているものの、その視線はチラチラと光を窺っていた。

先ほどのような訳の分からない呪文こそ唱えていないが、眼光の強さは変わっていない。

「碌鳴生徒会新会長の仁志 秋吉だ。書記としてこっちに来たことがあるから、川神以外は知ってるな。よろしく頼む……が、そこのアホには言ってねぇ」
「新副会長の長谷川 光です。お邪魔して早々、うちの新会長がすみません。俺が謝りますので、みなさんは遠慮なく殴ってやってください」
「おい、お前どっちの味方だ!」
「場を弁えないヤツの味方でないことは確かだ」

涼しい顔で一刀両断してやれば、仁志は不満げに顔を顰めた。

鳳桜学院への訪問は、新生徒会にとって初めての学外行事だ。

「系列校であってもケジメはつけるべき」と続ければ、対面の小鳥が微笑みを深めた。

「私も光くんに同感です」

彼女の視線は壁際の新村に向いていた。

いつもと変わらぬ穏やかな口調で告げられ、新村は決まりが悪そうに身動ぎする。

「悪かったよ」の一言を聞いて、光は認識を改めた。

鳳桜生徒会のメンバーは強烈な個性の持ち主ばかりだ。

気弱な部分のある小鳥で上手く御し切れるかと思ったが、どうやら余計な心配だったらしい。

彼女たちのやり取りからは、確かな力関係を見て取ることが出来た。

新村が矛を収めたことで、仁志も気持ちを切り替えたようだ。

仕切り直しを図るように、役員の紹介を再開させた。

「新会計が神戸 夏輝、新書記は一年の鴨原 久一だ。夏輝のことは、まぁ知ってるだろ」
「わたくしは二度目ですけれど、お話は伺っていましたの。ねぇ、小鳥さん」
「あ、はい。お久しぶりです、夏輝くん」
「……あぁ」

五十鈴に応じた小鳥だったが、その微笑は愛想の欠片もない返事によって消失した。




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