白いブレザーに臙脂色のプリーツスカートを纏った少女たちの登場に、仁志はベンチから腰を上げる。

光もまた居住まいを正して、その横に控えた。

「お待たせして申し訳ありません。碌鳴学院生徒会のみなさん、ようこそ鳳桜学院へ」
「小鳥ちゃん」
「碌鳴祭以来ですね、光くん。仁志さんも、お久しぶりです」

先頭に立つ小柄な少女――三葉 小鳥は、黒目がちな瞳を和ませて、可憐な笑みを浮かべた。

篠森 薫子から女王位を譲り受けたのは、副会長に就いていた小鳥である。

自らの資質に不安と迷いを抱いていた彼女にとって、生徒会長への就任は複雑な思いがあったに違いない。

憂いのない表情に密かに安堵すると、光もまた笑顔を返した。

「しばらくぶりだな、三葉。今回は――」
「おいおい、なんでお前が出しゃばってんの? 書記ごときが前に出るなよ」

生徒会長として応じた仁志を遮ったのは、敵意の籠った声である。

小鳥との再会に気を取られていた光は、発言者に気付くや唖然となった。

その人物は、華やかな美貌の持ち主だった。

白皙の面に並ぶパーツはどれもが整っており、垂れ気味の双眸が甘い色香を漂わせている。

仁志よりも明るい金髪のショートカットが、華麗な雰囲気を演出しており、薄い唇が描く傲然とした微笑がよく似合う。

だが、碌鳴学院に潜入して以来、穂積を筆頭に幾人もの見目麗しい人物と出会った光にとって、容姿の美しさは驚愕するものではない。

光が驚いたのは、その姿が少年と見紛うほど中性的であったからだ。

身に着けているのもネクタイとスラックスで、何も知らなければ男子生徒と誤解していたかもしれない。

仁志は真っ向からぶつけられた敵意に、ただでさえ鋭い双眸をきつく眇めた。

「あぁ? てめぇ、碌鳴の生徒会長様に向かって、なんだその態度は、コラ」
「はっ! お前が会長とは、悪い冗談だな。この下につかなきゃいけない他の役員が、気の毒としか言いようがないよ」
「そりゃどういう意味だ、新村!?」
「教えてもらわなきゃ理解できない程度の頭なら、即刻、生徒会長の座を降りるんだな!」

突然はじまった言い争いに、光は慌てて我に返った。

彼らの関係性は分からないが、他校で面倒事を起こすのは勘弁して欲しい。

喧嘩上等とばかりに声を荒げる友人を諌めるべく、その肩を引こうとした。

だが、新村と呼ばれた生徒は、仁志と睨みあっていた瞳を光に向けた。

鬼気迫るような表情で凝視され、思わず動きを止める。




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