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光が副会長職を引き受けたのは、碌鳴学院を守りたいと思ったからだ。
生徒の笑顔が生まれる場所を、作り出したいと感じたからだ。
同時に、学院の変革を望む穂積の考えに、賛同したからでもある。
生徒たちの中で、生徒会はもはや別世界の人間になっている。
高い家柄の者で構成されて来たために、仰ぎ見る存在として認識されてしまった。
生徒から切り離された生徒会役員は、学院の実情から遠ざかる一方だ。
ありのままの碌鳴学院を見ることも出来なければ、触れることも出来ない。
もし、生徒たちとの間に隔たりがなければ、インサニティの校内流通にもっと早く気付けただろう。
生徒会は崇められることで、隔離されていたのである。
光の役員就任は、その隔たりを失くす第一歩だ。
凡庸な家柄と不格好な容姿、そして卓越した実力。
現在の生徒会役員には相応しくない表面と、本来の生徒会役員になり得る内面。
学院に浸透した歪んだ常識を正せるのは、その両方の要素を持つ人間しかいない。
生徒たちのイメージにそぐわぬ姿で、生徒たちのイメージを上回る力を発揮すれば、誰もが認めるはずだ。
気付くはずだ。
この碌鳴学院に必要なのは、果たして何であるのか。
何を必要とすべきなのかを。
光は生徒会と生徒を繋ぐ橋になることを期待されている。
そしてすべてを覚悟した上で、挑戦の場に立っているのだ。
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