「あいつらは長谷川のことをちゃんと見ていないんだよ。この間の中間も確か総合一位だったよな。で、俺たち元書記方をぶっ飛ばせるような運動神経だろ? なんで長谷川のことを認めないのか分かんねぇよ」

学力と身体能力は、個人の資質の中でも特に重要視される要素だ。

光が一学期の期末試験と二学期の中間試験で主席を取ったことは周知だし、身体能力においても穂積の計略で広く認められるところとなった。

どちらか一つが突出しているのではなく、文武両道。

好意的な方向で一目を置かれても不思議ではない。

事実、今日の就任式まで光への反発は随分と落ち着いていたのだ。

「容姿と……何より家柄なのだと思います。生徒たちが長谷川先輩を、次期副会長として受け入れない理由は」

鴨原の冷静な口ぶりは、どこか諦めを帯びている。

碌鳴学院という場所の特性を理解した上で、突き放しているようにも感じられた。

「今まで通り、一般生徒でいたなら誰もが先輩を受け入れたかもしれません。ですが、運営組織に入るとなると話は変わってきます。長谷川先輩個人を拒絶するというわけではなく、副会長に就くことを反対しているのではないでしょうか」
「家柄のいい人間しか生徒会に入ったらいけない、なんて決まりないじゃんか」
「歴代の生徒会役員を考えれば、暗黙の了解と捉えられても仕方ありません」
「言ってることは分かるけどさ、やっぱそんなの変だって。役員は家柄でなるもんじゃないっつーのに」

新役員の二人は、口々に生徒たちの問題点を挙げて行く。

賑やかであったはずの空気は重くなり、今や箸を動かす者は誰もいない。

光は申し訳ない気持ちになった。

次期副会長として受け入れられない原因は、光にもある。

家柄はともかく、容姿に関してはわざと不格好にしているのだ。

穂積に綾瀬、歌音に仁志。

整った容貌の持ち主が多く在籍する碌鳴学院の中でも、現生徒会役員は群を抜いている。

そんな彼らを戴いて来たなら、光の姿はとても許容できるものではないのだろう。

分かっていても、光はこのままで通すつもりだった。

調査員である以上、素顔を覚えられるわけにはいかないのである。

光は静かに口を開いた。

「神戸の言う通りだと思う。生徒会役員は家柄や容姿で選ばれるべきじゃない」
「だよなぁ!」
「だから、俺が選ばれたんだ」

決然とした口調で言い切ると、神戸が虚を衝かれたように目を丸くした。

生徒たちは勘違いをしている。

家柄が良く顔立ちも美しくなければ、生徒会には入れないのだと。

入ってはならないのだと。

けれどその二つがどれほど秀でていても、運営組織の一員に相応しいとは限らない。

膨大な仕事量に押し潰されることなく、責務をまっとう出来なければ意味はないのだ。

「俺は生徒たちの思い込みを取り除くために、ここにいるんだ」




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