「くっそ……おい、ひか……っ!」

一方の救出に向かおうとした仁志は、しかし昇降口から現れた敵に、行く手を阻むが如くペイント弾を足元に撃ち込まれ舌を打つ。

ちゃちな連携プレーに、ふつふつと怒りが湧き上がった。

身を低くして素早く走りだすと、速さに目が追いつかない生徒の顔面を、モデルガンのグリップ底で殴り付けた。

「邪魔すんじゃねぇよっ!!!」
「がっ……!」

鼻を押さえて仰け反る相手を、更に銃身で薙ぎ払い吹き飛ばす。

無様にも地べたに転がった生徒は、鼻を押さえる両手を真っ赤に染めていた。

「仁志、やるじゃん」
「なに悠長なこと言ってんだっ!そこ動くんじゃねぇぞ!!」
「それは相手次第かな」

物陰から傍観している光は、まるで己が置かれた状態を認識していないのではと思わせるくらいに、余裕を帯びた声だ。

仁志との会話は当然、光を攻撃している生徒たちにも聞こえている。

恐怖から動けずにいると思い込んでいた三人の男子は、揃って眦を吊り上げた。

「余裕気取ってんじゃねぇよカスっ!!」
「穂積様にあんなことして、学院に居られっと思うなよっ」
「キモイ顔で碌鳴の制服着んな死ねっ!」

引き金にかけた指を動かし続け、転校生が隠れている柱へと足を進めた。

完全にキレている。

彼らの台詞から穂積の信者だと察した仁志は、謝られただけで許さなければよかったと後悔した。

もし光を〔死亡〕に追いやったとしても、追い討ちをかけそうな勢いだ。

「今そっち行くから、もうちょい待……」

後半は尻すぼみに消えて行った。

光は柱の影からモデルガンを放り投げたのだ。

突如として飛び出した標的に、信者たちの銃口は釣られたようにモデルガンに向かう。

瞬間、少年の華奢な身体はモデルガンとは逆側から躍り出て、そのまま目にも留まらぬスピードで床を蹴る。

「なっ……!?」

間近に迫った黒髪に、目を見開いたときにはすでに遅い。

速度を落とさぬまま繰り出された跳躍からの回し蹴りは、男子生徒の身体に凄まじい衝撃を与え、後の二名を巻き込んで転倒させた。

間髪居れず、光の拳が彼らの鳩尾に叩き落された。

「はがっ……っ!」
「ぐぇっ……!!」




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