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撃たれた二人はまさか開始早々にこんな目に合おうとは思わなかったらしく、おたおたと己の制服を見下ろすばかりだ。
「アホが。特攻組が居ることくらい読めてんだよっ!」
仁志は心底楽しそうに言い捨てた。
わざわざ他の生徒よりも早く一階に赴いた理由は、これだったのだ。
水軍からもすでに何名もの人間が他校舎へと侵攻している。
東、西の両棟へは、本校舎から行くのが平時だが、ゲームになると話は別。
自軍の校舎一階から出て、各校舎にある昇降口や非常階段を使い他領土に侵入する。
今しがた仁志に撃たれた二人も、その手で来たようだと、少年はすぐに理解した。
「流石に慣れてるんだな」
「油断すんなよ?まだ始まったばっか……光、伏せろっ!!」
切迫した友人の声に、光は床を転がるように柱の影に身を隠した。
ぎりぎりのタイミングで、ペイント弾が磨き上げられた床や柱に赤い斑点をこしらえた。
ここぞとばかりに発射される銃弾の雨が、真っ白な校舎をべったりとした血の色で塗りたくる。
「ターゲットはっけ〜んっ!」
「おら、出て来いよヲタクっ!!どうせ逃げ切れないんだからさぁ」
優位に立っていると信じて止まぬ声が、少年を嘲笑った。
そんなに無駄撃ちばかりしていれば、すぐに弾が尽きると何故分からないのだろうかと、胸中だけでため息だ。
被弾して破裂するペイント弾の数から、光は相手が三人だと推察する。
コレくらいならば訳はないだろう。
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