優秀な生徒、有能な教師。




事の発端は、都内で見つかった新種の薬物だった。

即効性の催淫作用をもたらすその薬物は、安価なセックスドラッグとして青少年たちの間に蔓延しており、突発的な中毒症状の発症からマトリの捜査対象となった。

最初に逮捕された購入者の少年が語った売人の情報は、都内からは遠く離れた碌鳴学院の生徒だというもの。

半信半疑で学院の傍にある街を捜査した結果、同様のドラッグがそこでも流行している事実が発覚する。

城下町と称されるその街と都内の二箇所でのみ爆発的な広がりをみせていたことから、捜査の目は碌鳴学院へと向いたものの、学院の特異性によって捜査は難航していた。

資産家や権力者の子息ばかりが在籍しているために、捜査のメスを入れることが出来なかったのだ。

木崎探偵事務所に依頼が持ち込まれ、千影が「長谷川 光」として潜入調査に入っても具体的な成果は一向に上がらず、学外での被害は以前として続いていたという。

ただし、学院内での蔓延状況は二学期を境に激変する。

ドラッグを大量に所持していた霜月 哉流の退学だ。

供給者の消失によりドラッグは品薄となり、手に入れることが出来なくなった購入者たちが心身バランスを崩して保健室を訪れるケースもみられた。

そんな中で、銀髪の男による霜月の睡眠薬服用事件が発生し、体育教師・佐原への疑惑も浮上。

蔓延する学外とは対照的に、学院内では流通が止まり収束に向かい始めたものの、一向に安心できない事態であった。

ドラッグの名前はインサニティ。

狂気の名を持つ、悪魔の媚薬である。




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