「でもっ、だからって会長たちのせいじゃ――」
「今後、同じようなことが起こらないとは限らない。今回の二の舞とならないためには、新生徒会役員の家柄は中流が望ましいんだ」

何もかもを自分たちの責任にする必要はない、言い募ろうとした光はこちらを遮った穂積の発言に、ようやく己の危機を察知した。

しまった、そういう話の流れだったのか。

「これまでのようでは生徒間に入ってはいけない。気軽に接触を持てるレベルの人間が、次の生徒会には必要だ。分かるな」
「もちろん、生徒会が舐められちゃ困るから、引き続き強い力を持つ家の子も起用するけどね」

補足した綾瀬は、相変わらずにこにこと笑っている。

歌音を見れば申し訳なさそうに眉尻を下げていて、扉の方からは殺し切れない笑い声が鼓膜に届く。

光は深く長い溜息を吐いた。

愚鈍な自分を罵ったりなどしない。

今のは明らかに穂積が巧みだったのだから。

「傲慢魔王……」
「何とでも言え、嘘は言っていない」
「俺の他にも中流家庭出身の生徒はいるだろ。ここ、金持ち向けの学校だけど、入学審査に家柄は含まれていないはずだ」
「そうだな、法外な学費と言うわけでもない。しかし、お前ほど実力の飛び抜けた者はいないんだ。家柄を問わずにしてもな」

さらりと返されて、思わず喉が詰まった。

当たり前の顔でそんなことを言うなど卑怯だ。

じわじわと頬が熱くなるのが分かって、光は慌てて対面の男から顔を背けた。

小走りの鼓動に悔しい気持ちでいると、会計の天使が控えめに言を紡いだ。

「いつの間にか、生徒会に入るのは良家の人間って言う風潮が出来ていたけれど、本当は実力があるからこそ役員に選ばれるんだ」
「でなければ、学院を動かす役目を果たせるわけがない」

続けた逸見の口調に、からかうような色はなかった。

「長谷川」
「は、い」

引力のある強い声で名を呼ばれ、再び正面に向き直る。

肌を焦がす緊張感が、一気に室内を満たす。

直面した漆黒の双眸は、少年の心を貫いた。

「俺は、お前が副会長になることを望む」




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