生徒会を中心として回る学院では、その膨大な仕事量から少数精鋭の生徒会では現実問題、処理が追いつかない。

このため、生徒会補佐委員会と呼ばれる下部組織が作られ、生徒会の各役職の下で仕事のサポートを行っている。

逸見 要は生徒会補佐委員会の委員長であると共に、会計方筆頭である。

歌音の熱烈なシンパで構成された会計方ならば、彼の意向に背くことはまずない。

きちんと与えられた任務を遂行するだろう。

「分かった」
「ありがとう、穂積くん」

しっかりと頷いた男に、歌音が頬を緩めた。

自然と張り詰めていた室内の空気が、ほっと弛緩する。

「仁志」

いきなり名を呼ばれて、仁志は驚きの表情をみせた後、すぐに「まだ許していない」と仏頂面をこしらえた。

だが。

「悪かった」
「……は?」
「当日はお前も傍に居てやれ」
「……え?」

予想もしない言葉に、茫然自失。

何を言われたのか、理解が追いつかず硬直する金髪に変わり、綾瀬が嬉しそうに口を開く。

「穂積って根性最悪でひん曲がってるけど、これだから嫌いになれないんだよね」
「黙れ」

揶揄するような口調に、射るような返事。

それでも副会長の機嫌は良好のまま。

未だ目を白黒させる不良少年を微笑ましい思いで見ていた歌音だったが、気付いたように素朴な疑問を口にする。

「そう言えば、命の危険まであるって分かっているのに、どうして長谷川くんを〔ゲスト〕に?本気で殺すつもりだったわけじゃないだろうし……」
「あ、それ僕も気になる!」

挙手をする綾瀬を一瞥した穂積は、「それは……」とまで声に出し。

次いで不思議そうな顔をしながら、内心だけで首を捻った。

奇妙な間に全員の視線が彼に集まる。

「……俺にもよく、分からない」

何故か。

何故か、長谷川 光は無傷で乗り切るだろうと言う明確な自信が、穂積の中には存在したのである。




- 50 -



[*←] | [→#]
[back][bkm]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -