くどいようだが碌鳴学院に集う生徒の多くは、将来の日本や世界にとって重要な歯車になる可能性の高い者だ。

良家の子息の入学しか認めていないわけではないので、光のように一般人も在籍しているけれど、それは極一部。

生徒たちは、言わば未来の要人たちである。

そんな上流階級者たちがひしめく学院で、他よりも優れた成績を残すことが叶えば、プラスにこそなれマイナスにはならない。

競われるのは単純な運動能力だけでなく、統率力や企画の発想力、戦術の計算力やコミュニケーション能力と様々な資質なのだ。

実績として有用であるわけではないだろうが、碌鳴生たちにとっての体育祭は、数ある行事の中でも特に力の入るイベントなのだと推察した。

「大変なんだな、いろいろ」
「人ごとみたいに言ってんじゃねぇよ」
「人ごとだよ。俺、別に良い成績残す必要ないし」

例え好成績を残したところで、光には待ち構える玉座などない。

誇る相手もいないのだから、極端な話をすれば最下位であっても支障はなかった。

「はぁ?なに言ってんだ、光」
「なんだよ、仁志まで張り切って」

金髪頭の下で眉を持ち上げた男に、少しばかり驚く。

喧嘩要素のある行事ではない上に、未だに仕事が立て込んでいる現状を鑑みれば、てっきりダルそうにすると思ったのに。

不思議顔で相手を見返すと、仁志はぐっと拳を握り締める。

その背後で並々ならぬ闘気が炎となって噴き上がった。

「学年対抗なんだぞっ、バ会長を潰すチャンスじゃねぇか!」

爛々と煌めく鋭い瞳に、「返り打ちにされなければいいな」という冷静な感想を口にすることは終ぞなかった。




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