「生存者?……やっぱり、これから殺し合いを……」
「だから違ぇっ!!」

本校舎に入ったせいで、ぐっと人口密度の増した中、仁志のツッコミに周囲の生徒がぎょっと肩を竦めて蟻の子さながら逃げていく。

大方、彼がキレたのとでも思ったのだろう。

「じゃあ、なんなんだよ〔生存者〕って」
「生徒は他軍に旗を奪われないように領土を守ったり、旗を奪いに行ったりすんだけど、そのときに各自事前に支給されるペイント弾のモデルガンで敵を倒すんだよ。心臓なら一発。他の部分でも三発の被弾で〔死亡〕ってことになって、その時点でゲームオーバー。生存者から除外される」
「……なんか、すっごい危険なゲームじゃねぇ?」
「まぁな。腕に覚えのある奴はペイント弾を使わずに、格闘戦に持ち込んだりする。こっちの場合、気絶させるか降伏を宣言させるかしないと、〔死亡〕にならないから面倒なんだけどな」

実感の篭った感想に、仁志は確実にモデルガンなど使わないのだろう、と悟る。

サバイバルゲームと聞いた時点で、学校行事としては有り得ないと思ったが、知れば知るほど有り得ない。

学院を挙げて行うイベントが、暴力行為を推奨するだなんて。

オマケに、三国志などとオブラートに包んだ言葉を選んだが、このゲームは明らかに戦争だ。

極限まで簡略化されてはいても、構図は相違ない。

「マジかよ……」
「何度でも言うが、この学院は変なんだよ」

仁志がことある事に口にする台詞に、今まで以上に同意だ。

『変』と言うレベルを超越していることにまで目を向ける力は、残っていなかった。

疲れたように肩を落とした光は、しかしふっと沸いた疑問を隣に投げる。

教室に向かって東棟の廊下を歩くが、やはり周囲は少年への罵声で占拠されており、時折仁志が鋭い眼光で、生徒たちを牽制しているようだったが、効果は一時的ですぐに喧騒は復活していた。

「あのさ、仁志みたいに喧嘩強い奴はいいかもしれないけど、運動出来ない生徒だっているだろ?そいつらにとったら、悲惨じゃないのか?」

特に、碌鳴には女子と見紛うような華奢な生徒も多くいる。

彼らにバトルありのゲームなど、耐えられるとは思えない。

至極真っ当な質問に、仁志は安心させるように笑った。

「それなら問題ない。うちの行事ん中でも、サバイバルゲームはかなり特殊だからな。基本的には希望者のみの参加になってる」

なるほど。

考えなしのわけではないようだ。

万が一にも強制参加だとしたら、それこそ問題になるだろう。

「だから、お前は絶対ぇに参加すんなよ」
「え?」

正面に回りこんだ仁志に、びしっ!と眼前に指を突きつけられて、光はびっくり。

考えてもいなかった選択肢を促されて、戸惑ったように言葉を紡ぐ。




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