『その被害者は誰だろうか。首謀者は誰だろうか。諸君らは何を思うだろうか。何を、思うべきだろうか』

疑問の形を取って響き渡る、感情の窺えない深い低音。

光は膝の上に置いた拳をぎゅっと握り込んだ。

『答えなど分かり切っていると、何人の者が言えるだろうか』

彼の問いかけは、疑問であって疑問ではない。

誰の脳裏にも解答は容易に浮かんで来るものであり、そうでなければならないと断言している。

答えられねばならぬと、突きつけている。

穂積の有する王者の風格。

生来からの絶対的上位者である証。

その比類なき不可視の力は、いつだって生徒たちを熱狂させて来た。

今、彼は己の有する資質で、熱狂とは似ても似つかぬ気持ちを生徒たちに体感させている。

群衆を魅了する力ではなく、戒める力。

畏れながらも敬意を払わずにはいられない、畏敬の念。

王たる者だけが持ち得る、厳粛な刃だ。

びりびりと表皮を震わせながら、少年は他の生徒と同じく穂積を一心に見つめていた。

『諸君らに再度問う。何のためにこの学院の門を潜ったのか、志半ばでこの場から去るためではないはずだ』

魂さえも揺るがす強い宣告は、大講堂に集ったすべての人間の胸に衝撃をもたらした。




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