任せとけと笑った金髪頭を思い出し、千影の顔も神妙なものにならざるを得ない。

「俺が覚悟を決めて、他の役員にも真実を言えればいいんだけど……。今はまだ、無理だ」
「完全に信用できない内に、こっちの立場を明かすわけにはいかないからな。判断としては間違ってない」

僅かな疑念の入る余地もないほど、絶対的な信頼がなければ、正体を明かすことは極力回避すべきだ。

他愛もないことがきっかけで、双方が疑心を抱き連携が崩壊する恐れがある。

判断は間違っていなくとも、未だに綾瀬や歌音、逸見を信じ切れない自分の臆病な心に、嫌気が差した。

「……ま、仁志 秋吉なら上手くやるだろう。俺たちは調査を続けるだけだ。それよりも、十分に注意しろよ。「千影」でいられる場所が増えた分だけ、油断も生じやすくなる。気は抜くな」

そう言って、木崎は仕事の話を締めくくった。

こちらの内心を察してくれたに違いないと思えば、申し訳ない気持ちに苛まれたけれど、以前とは異なり、千影の気持ちが頼りなく揺らぐことはなかった。

心配をかけたくないのなら、この程度のことで揺らいではならない。

悩む己を否定はしないが、捕らわれるばかりでは身動きが取れなくなると、今の千影は理解していたから。

穏やかな色彩の眼で、相手の瞳をしっかりと見据えながら首肯。

驚いたように瞠られた目を認識する前に、向かいの色男はいつもの飄々とした態度に戻った。

「そう言えば、もうすぐ交流会だな」
「交流会?」

思い出した風に言われた内容に、光は首を傾げた。

覚えのない単語を復唱する。

行事予定表に書かれていただろうかと記憶を探りかけて、例の如く確認を怠っていたと気づく。

いつまでたっても、行事予定表には慣れない。

微苦笑を浮かべる少年に、武は眉を上げた。

「聞いてないのか?二年の修学旅行が九月前半の行事だとすれば、交流会は後半の行事だ。こっちは特定学年だけじゃなくて、全学年が関係するイベントになってる」
「武先生は詳しいんだな」
「そりゃ、養護教諭と言っても教員ですから。面倒な朝礼にも週一ペースで顔出してますよー」
「それ、少なくないか?」
「交流会ってのは、碌鳴系列の他校からそっちの生徒会役員が来ることなんだけどな」
「無視かよ」

子供の冷ややかな目からさっと視線を逃がした保護者は、突っ込みなどなかったように行事の説明を話し始めた。

近いうちにHRで須藤が話すことは予想できたが、光は諦めて口を噤む。

知らない行事であるのは確かだし、聞いて損にはならないはずだ。

「確か、鳳桜学院っていう女子校だったか?そこの生徒会が碌鳴に数日滞在して、授業受けたり部活見学したりするそうだ。系列校同士で親交を深めるためらしいが、野郎共の群れに女の子放り込むなんて、何考えてんだか」

やれやれと溜息を吐きだす男に同感だ。




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