光はキッチンに入り、電機ポットのスイッチを入れた。

「確かに、さっきの会長?顔は物凄く整ってたけど、あれだけ性格悪いと敵も多いはずだろ。リコールとかはないの?」

惣菜パンに噛り付く相手の対面に戻りつつ尋ねてみた。

碌鳴の特色は、転入一日目ながらだいぶ分かっているつもりだ。

だから、美形代表とも言うべき穂積が人気者で、生徒会長という役職に就いているのだとも想像がついた。

けれど、あの性格は頂けない。

以前潜入した不良グループにも、酷い性格の奴はチラホラいたが、穂積はその数百歩上を行く。

早くも一つ目を食べ終えた友人は、一旦食事の手を止めると、食堂で見せた真剣な表情を作った。

「バ会長がリコールされることなんて、ありえねぇよ。この学院じゃ不可能だ」
「なんでだよ」
「お前だって、顔が良い奴が優遇されるってのは理解してんだろ?けどな、アイツが会長やってんのは、何もビジュアルだけが理由じゃねぇんだよ」
「どういう意味?」

仁志はペットボトルのお茶で喉を潤すと。

「家柄、成績、個人の資質……どれを取っても、奴に敵う人間はいねぇ。俺だって、あぁ言うデタラメな部分以外なら、尊敬しているとこもある。……ただでさえ碌鳴に染まってる奴ばっかなんだ。ここじゃバ会長は絶対君主だな」
「そんな凄い人間には見えなかったけど……」
「アイツの言葉で、碌鳴の人間のほとんどが動く。生徒の退学、教師の解雇、施設の増築、全部叶えられるんだよ」
「まさかっ!」

一生徒がそれほどまでに強大な力を持ってなどいるものか。

突飛な話に光は笑いかけたが、仁志の鋭い眼差しに冗談を言っている気配は少しもなかった。

「笑うな。本当のことだ」
「仁……志……」
「いいか。お前のために率直に言うが、ただでさえお前の外見はここじゃウケが悪い。加えて、お前は俺と一緒にいる。これだけで光は学院の生徒の半分を敵に回したようなもんだ」
「……」
「しかもだ。あれだけ大勢の人間の前で、会長に喧嘩を売った。何が起こるかわかんねぇぞ」
「そんな……」

事態の深刻さに、顔から表情が抜け落ちる。

何故、こんなことになっているんだ。

自分はまだ学院に来て一日も経っていないのに。

魔王に目をつけられた。

そういうことなのか?

硬直した少年に、男は悔しそうに金髪を掻き毟った。

「俺も少し、考えなしだった。冷静になりゃ、俺といるだけお前を邪魔に思う奴が出てくるって分かんのに……お前とダチになりてぇとか、思っちまったんだよ」
「仁志……」
「食堂もなぁ……。まさか会長があんなキレるとは思わなかった……いや、言い訳だな。俺が専用席なんか行かなきゃ、光が面倒臭ぇことになんなかったのに。悪かった」
「謝んなよっ!そんな、仁志が自分を責める必要なんか、何処にもないじゃんかっ」

自己嫌悪に消沈する仁志に、光は慌てて言い募る。




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