はっきりと指摘された瞬間、浅薄な己にカッと血が上る。

勘違いにもほどがある。

問題は、光の心情などではなかった。

仁志を売人候補から除外した理由を、光は随分と前から察していた。

もともと観察力は優れているから、学院の特性を掴むまでも早かった。

生徒会役員である仁志が、生徒の注目を集めてしまうせいで、ドラッグの売人にはなり得ないことくらい、早い段階で分かりきっていた。

それなのに、光はずっと仁志を疑いの眼で見続け、数ヶ月経った現在、ようやく木崎へ報告している。

然程疑わなくてもいいと分かっている人間に、注意を払っていた光は、無意味に時間を消費し調査の進行を妨げかねない真似を働いたのだ。

誰に真実を晒すより、ずっと調査員としての自覚に欠けた行動。

馬鹿だ。

調査員、失格だ。

欺いている罪悪感やもどかしさに気を取られ、冷静さを失っていたなんて。

「答えられないか、千影」

真実の名前を呼ばれ、床に張り付いていた目を持ち上げる。

内側の悔恨に沈んでいた意識が、正気に返ったのは次のときだった。

「お前に足りないのは、自信だ」

きっぱりと、言い切られる。

鼓膜を揺らした単語に、戸惑いを隠せない。

自信が足りないとは、どういうことだろう。

過信しているとは思わないが、自分を過小評価しているとも思えない。

光の自己分析を、木崎は完全に否定した。

「お前は分かってたんだよ、仁志 秋吉が売人じゃないことくらい。やつを取り巻く環境とか、立場とか関係なしに。お前は、あいつが売人じゃないって知っていた」
「どういう、意味だよ」
「分からないか?分かるだろう、お前なら。俺みたいに直感で、仁志 秋吉に売人は不可能だってことに気付いていたんだろ?」

ビクンッと、身が竦んだ。

心当たりなどないのに、まるで真実を言い当てられたかの如く、鼓動が速度を上げた。

自分は、分かっていた?

本能的に察知していた?

まさか、光には木崎のような絶対的な調査員としての勘はない。

仮に勘が働いていたとしても、精度が低くて売人でないと断定するだけの力はないはずだ。

対面の男は、こちらの思考を看破する。

「今、お前否定してるだろ?」
「っ……だって、俺には武文みたいな勘はっ」
「お前、仁志 秋吉と友達になりたいって思ったの、いつだ」

唐突な質問に、反論の台詞が遮られる。




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