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てっきり一蹴されると思っていたので、光は内心だけで安堵すると共に、相変わらず鋭い保護者の観察眼に感嘆する。
一見しただけでは、優しげなイメージしか持たれないであろう須藤に的確な見立てだ。
転校初日から光は散々なことを言われている。
「あれは笑顔でキツイこと言うタイプだな」
「よく分かったな」
目を二三度瞬かせた相手は、途端に顔を顰めた。
素直に褒めたこちらとしては、予想外の反応。
「なんだよ」
「いや、嫌なこと思い出しただけだ」
「嫌なこと?」
興味を前面に押し出して顔を覗き込んだとき、ウェイターが料理を運んで来た。
仕方なく態度を整えるも、武の台詞は気になった。
三人分の食事が用意され、丁度いいタイミングで食堂の入り口から仁志がこちらへと戻って来た。
追求は無理かと諦めた少年は、隣の席の男が呟いた囁きを、聞き逃した。
「あの馬鹿も似たようなタイプなんだよ……」
気重なその、囁きを。
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