植え込みで目隠しをされた小さな空間を、学院では裏庭と呼ぶ。

万一サボリを注意されても鬱陶しいと、その裏庭のベンチに居場所を定めた。

木々に陽射しが遮られ、暑さも幾分和らいでいる。

ちらほらと残った蝉の声を聞き流し、ぼんやりと中空を眺めた。

「仁志の、友達ってなんだよ……」

結局そこか、と自嘲する。

学院ホストが紡いだ、最後の一つ。


――アキの友達って感じ


生徒たちから受け入れられ出しているのも、気になっているのに。

学院での調査をしやすくするために、動きやすくなった今の状況は好機なのに。

真実心奪われた話が、調査と無関係とは情けない。

須藤をマークすると決めた。

千影として穂積からもらった、リストの生徒も注意している。

でも、精神的なバランスを崩すのは、いつだって調査以外の問題なのだ。

このままではいけない。

自分は調査員として育てられた。

調査員としてこの学院にいる。

「長谷川 光」になったのは何のためか忘れたか。

光の中で仁志の存在は、もはや見過ごせないほど確かになっている。

今更、彼との関係を放って調査に専念するのは不可能だ。

ならば一刻も早く仁志にすべてを話して、この不安と罪悪感を終らせなければ。

終らせて、ドラッグのことだけに集中しなければ。

あぁ、違う。

今考えていたのは、生徒たちの態度の変化の原因だ。

いや、駄目だ。

それよりも須藤が本当にドラッグと関係しているのなら、いくつか生じる疑問点がある。

考える優先順位は、こちらの方が高い。

待て、もっと視野を広げろ。

誰か一人に集中するから、リストの人間の確認が半分程度しか終っていないのだ。

「あー……最悪」

頭の中が、まとまらない。

脳を動かそうとするのに、まったく上手く行かない。

空回りして、暴走している。

やるべきことが溢れ出して、容量オーバー。




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