大人しく従った自分が馬鹿馬鹿しくなって、やる気のない目で外から穂積の姿を観察した。

浮いている。

恐ろしいほど浮いている。

何てコンビニの似合わない男だ。

類まれなる優れた容姿の男に話しかけられ、レジにいた店員がぎょっとしている。

まばらにいた客の視線まで集めているくせに、当人は注目されることに慣れていて、まったく頓着していない。

学院での彼を思えば、この程度何ともないのだろうが、それにしても。

「……何を笑っている」

噴出すのを必死で堪えていたら、自動ドアから穂積が戻って来ていた。

不機嫌に顰められた端整な面を前にして、誰が本音を言える。

「え、笑ってないですよ。全然まったくこれっぽっちも」
「……ほぉ」
「あんまりコンビニが似合わないんで笑っていました」

紳士的な笑顔で氷点下の殺気を醸し出され、気付けは口が勝手に白状していた。

裏切り者となじりたいが、己の生命活動に支障を来たすわけにはいかないと、防衛本能が働いたのだから仕方ない。

どんな攻撃が来るかと身構えるも、予想に反し男はふっと苦笑をして、またしても先を歩き出す。

「付き合えって、コンビニのことじゃないのか?」
「当たり前だ。どうして俺がコンビニに付いて来いと言うんだ」
「理由言わなかったのそっちのくせに」

反論はスルー。

これまた似合わない大きなビニール袋を手に、長い足で行ってしまう。

千影は大きなため息をつくと、保護者に夕飯は適当に済ませてくれとメールを打った。

穂積に連れてこられたのは、城下町の中でも学院のある山に近い公園だった。

遊具はブランコと滑り台だけで、広さとまったくそぐわない。

夜の現在はもちろん、日中も遊びに来る子供はいないのではないかと思ってしまう。

「童心にかえりたいから付き合えってこと?」
「そうかもな」
「……付き合いきれる自信がない」

生憎、友達と公園で遊ぶなんていう幼少期は過ごしていない。

つい眉を顰めれば、穂積のクスリと笑った顔が数少ない街灯に照らされて、わけもなく鼓動が跳ねた。

公園の中心にポツンと設置されているベンチに、男は持っていたビニールの中身を出した。

ガサガサと音が聞こえるも、手元の暗がりと距離を置いているせいで、よく見えない。

緊張しつつ一歩を踏み出そうとした千影は、ポッと暗闇に浮かんだ赤い光りにぎょっとなった。

赤い、光り。

「ちょっ、おい真昼!火遊びとか言うなよ」
「火遊び?あぁ、火遊びだな」
「放火は不味いって。ストレス溜まってんなら別の方法で発散しろっ」
「……誰がそんな真似するか」
「じゃあ一体なにを……わっ!え?」




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