六時を回った頃に再び待ち合わせた二人は、目をつけていたクラブで大した情報も仕入れられず、早々に音の波から抜け出した。

情報収集など八割以上が空振りばかりで、穂積との調査でもほとんど今日のようなパターンだ。

日の長い季節だが、外に出ればすでに街頭が灯り辺りはとっぷりと暗くなっていた。

「また違ったな」
「あぁ」

人通りがぐっと減った道を、並んで歩く。

解散場所も自然とお決まりになっていて、千影たちは城下町の中心にある広場へと向かっている。

いつもより少し遅い歩調でいると、傍らの男がピタリと足を止めた。

「なに、どうした?」

密かに心臓をドキリとさせながら、問う。

夜よりも深い黒曜石に射抜かれて、妙に落ち着かない気持ちだ。

「お前、まだ時間はあるか?」
「え?」
「もう少し付き合え」
「は?」

不遜な命令口調で言い切ると、男はこちらの返事を待たずにクルリともと来た道を引き返して行く。

なんだ、どういうことだ。

こんなことは今まで一度もなかった。

自分たちの関係はあくまでドラッグを接点にした協力者でしかなく、調査が終われば時折食事をすることはあっても大抵がすぐに解散していたのに。

付いて来るのが当然というようにさっさと歩き出されてしまえば、戸惑いつつも後を追うしかない。

「お、おい。何なんだよ」
「いいから付き合え」
「理由くらい言ってくれてもいいだろ」
「どうせ暇だろう」

質問の答えに代わって寄越された言葉の、何と横暴なこと。

肝心な部分を一切教えてくれない穂積の後ろで、少年は「傲慢魔王……」と悪態をつく。

だが、本当に不満があるのならば、彼を無視して帰ってしまえばいいのも事実。

分かっていながら付いて行くのは、千影自身が離れがたく思っているからだろうか。

広場へ向かう速度を、意識的に緩やかにしたのと、同じ理由があったのかもしれない。

どこへ行くのかと気になりだしたところで、穂積は再び足を停止させた。

「待ってろ」と言い置いて、自分はすぐ目の前の店に入ってしまう。

「こ、コンビニ?」

駄目だ、いよいよ理解が出来ない。

付き合えと言っておいて、どうして到着場所がコンビニなのだ。

しかも外で待たされている。

意味不明極まれり。

「……帰ろっかな、俺」




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