「これ、食堂って言うより高級レストランだろ」
「そんな立派なもんでもねぇだろ」

いえいえ、十分立派ですよ。

ははっと冗談に笑うかのような仁志に、光は彼も十分おかしな碌鳴の一員なのだと感じた。

「金銭感覚狂ってる……」
「お前もこれからその一員だ」

いいや、自分はどこまでも庶民ですから。

と反論しようとしたのと、黒服が席を示したのは同時だった。

他の席と随分と距離を置いた、硝子張りの壁の近くに位置されたテーブルは、食事の合間外の庭園を眺められるポジションだ。

綺麗に刈り込まれた緑と、季節の花が植えられた花壇が左右対称に存在し、中央には噴水が見える、素晴らしいガーデン。

梅雨に入る手前の今日は、温かな陽光が淡い琥珀色を惜しげもなく降り注いでいた。

「凄い……一望出来るんだ」
「いい場所だろ?他のヤツらの声も、ここならあんまり届かねぇし、静かに飯が食えるんだよ」

硝子に吸い寄せられた光を見ながら、仁志は少し得意げだ。

「生徒会専用席だから、余計な奴も来ないしな」
「え?生徒会……って、誰?」
「俺だ、俺」

聞きなれぬ単語に相手を振り返った少年は、信じられぬ台詞に前髪の下で目を白黒させる。

「え、え、だって生徒会って、生徒の代表なんだろっ!?なんで、仁志が生徒会なんだっ!?冗談はピアスの数だけにしろよっ!!」
「てめぇっ……いい度胸だな」
「だって仁志、ガリ勉くんとはかけ離れてんじゃんっ!こんなカッコイイ生徒会がいるなんて有り得ないだろっ!!」

光の想像する生徒会と、正面で生徒会役員を主張する男は、まるで違っていた。

勉強を第一として、全校生徒の手本となるように校則に厳しく、選挙シーズンになると政治家さながら、たすきを掛けて演説を行う。

これが光の抱く『生徒会』の姿。

だが仁志はどうだ。

不良よろしく金髪の髪と幾つものピアス、シルバーアクセ。

碌鳴の真っ白なブレザーと紺色のスラックスを身につけてはいるが、ネクタイは緩めているし、シャツのボタンも鎖骨が見えるまで開けている。

今日だけかもしれないが、授業中はオール睡眠時間。

そんな奴をどうして生徒会の一員だと思えるか。

目つきを厳しくさせた仁志に若干怯えつつも、光は一息で吐き出した。

「はははっ……!!あ〜なるほど、分かった。お前が前いたガッコの生徒会は、ガリ勉野郎がやってたわけね。ははっ……そっか、そっか」

弾かれたように笑い出した男に、光はうろたえる。




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