「お前は、あいつの知り合いか」
「知り合いよりも進んだ仲」
「……あいつとどういう関係だ」
「千影の味噌汁を毎日飲めちゃうような関係」

またしても人を食ったような態度に戻られ、怒りが込みあがった。

まともに相手をしようとした途端、どういうつもりだ。

大体、何が目的に自分に接触して来た。

微妙な言い回しは、自分を挑発しているのだと分かっても、いつものように冷静に無視など出来なかった。

深い場所から溢れ始めた、ほの暗い不快感。

きつく眉を寄せ、先ほどよりも強く睨み付けた。

真っ向からこちらの視線を受けた男は、にやりと口端を持ち上げると。

「気になるなら乗れよ、お兄さん」

これ見よがしに挑戦的な目が誘う。

どうやら、本当に用があるらしい。

抱く既知感の手がかりを得られるかもしれないし、何より謎だらけの千影について、知りたいと思う欲求は強かった。

穂積は熱くなった己を逃がす意味も込めて、一度だけ嘆息。

助手席の扉を開き、迷うことなく乗り込んだ。

「味噌汁か……。ネタが古いな」

不遜なまでの余裕で言い放てば、隣の男の苦い表情がバックミラーに写っていた。




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