今後の予定。




黒板の上に綴られる白墨の文字。

進学校なだけあって、休み時間の五月蝿さが冗談のように、授業は静かに進められた。

教員の問題を解説する声を聞き流しながら、光はそっと右隣の席に目を向けた。

強烈な存在感を放つ金髪は、腕を枕に机にうつ伏せ。

寝息すら聞こえてきそうな居眠りだが、驚くことに誰も注意をしない。

これもまた学院ならではのルールなのか、と呆れながらも、光の黒い目は理知の輝きを灯し、探るような色で男を観察していた。

本名、仁志 秋吉。

自分が碌鳴学院に足を踏み入れてから、初めてまともな会話をしたであろう男を、光は知っていた。

『アキ』

前回の調査で潜り込んだ不良グループに、彼はアキと言う名で顔を出していたのだ。

ゴールデンウィーク辺りに、チームメンバーに付き添う形で、何度か溜まり場のクラブに訪れていたのを記憶している。

調査を進める段階で、途中参加のアキはノーマークだったが。

同じ人間が、二度も調査先に居るものだろうか。

ドラッグの売人が隠れていると目される場所に。

会話をしている最中、仁志の態度に気を配っていたが、中毒者や常用者特有の症状は見られなかった。

特にインサニティは香りが特徴的なので、すぐに分かるはず。

サンプルとして薄めた匂いを嗅いだが、こっくりと甘い蠱惑的な香りは、服用者を見つける大きな手がかりだ。

けれど、仁志からは彼が愛用しているのか、オードトワレと思われるものしか漂っては来なかった。

勿論、ドラッグを捌いている人間すべてが、クスリをやっているわけではない。

本音で言えば、最初に疑われたこともあったし、なるべく彼には近付きたくないが、状況が赦してくれなさそうだ。

転入早々、売人候補を見つけた光は、しばらく彼の傍に張り付いてみようと決めた。




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