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木崎から渡された資料には、碌鳴のパンフレットも入っていた。
隣県に幼稚舎を初めとする各施設があり、いずれも全寮制で男子校だ。
思春期真っ盛りの健康な男子を、女性と隔離するのは如何なものか、と思ったのでよく覚えている。
今更なことを、何を秘密ごとのように言っているんだと、光は胡乱気な顔をした。
対する仁志は、上手く伝わっていない事実に苛立ったように軽く舌を打つ。
「あのな、お前のために言葉を選んでやってたら、いつまで経っても分かんねぇままだと思うから、率直に言うぞ」
「初めからそうしてくれって」
「……いいか、うちの学院は―――」
けれど、仁志の言葉が光の耳に入ることはなかった。
「ほら、席着けー。授業始めるぞ」
タイミング悪く、一時限目の教員が教材を手に声を張った。
「っのタコ。大事なとこで来やがって」
「悪い、仁志。また今度教えて」
結局彼が何を言いたいのかさっぱり分からないまま、光はスクールバッグから勉強道具一式を取り出した。
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