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この奇妙なデジャヴュは、一体どうしたものか。
初めて会った相手に抱いた既知感は、時間が経てば経つほど強くなった。
勘違いなどではないと訴えるように、「ちかげ」の瞠目した虹彩が輝きを増す。
彼のことを知りたい。
湧き上がった欲求は、どんどん膨れ上がった。
「綾瀬」
「なに?」
「お前、明日から学院に戻れ」
「え!?なに、どうして?」
突然の命令に対面の男がぎょっとする。
当然だ。
城下町での調査が上手く行かなければ、転校生の潔白を証明出来ないのは勿論だが、この夏の方針を決めたのは、つい先日のことなのだ。
早々に切り上げを要求される意味が分からないだろう。
テーブルの上で汗をかいたアイスコーヒーのグラスを眺めながら、穂積は言った。
「お前には別のことを調べてもらう」
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