光はキザキである。

後藤の側近としてチームに尽力していたことは、数日あの場にいただけでも容易に知れた。

キザキが入ったおかげで。

チームの勢力が拡大した。

敵対チームとの抗争に勝った。

警官から逃げ出せた。

交流を持ったのは末端メンバーばかりだったが、誰もがキザキの武勲とも言うべき活躍を口にした。

それほどチームのために力を注いだ少年が、この一件を知らなかったはずがない。

後藤と松山組の繋がり、麻薬の存在を。

転校生を迎えた頃から、ドラッグ問題が発生した己の在籍する学院。

薬に関する詳しい情報を語った光。

キザキは、光は、麻薬に関係する場所に存在していたのだ。

違う、違う、そうじゃない。

まだ決定的なものは何もない。

脈打つ胸の音が、静かな空間では五月蝿かった。

脳裏に浮かぶのは、光が消えた日の生徒会室。

くすんだ空のように誰もが重苦しい表情をしていた。

本当は、穂積に言われたときから不安だった。

正体のことと合わせれば、光とドラッグを結びつけるのはとても簡単だったから。

だから自分は、その疑念を消すためにここに戻って来たのだ。

あの友人を信じるために、ここに帰って来て、後藤について調べさせたのだ。

やるべきことは、疑うことではない。

やるべきことは、今にも注がれるだろう光への疑いの眼を消すことだ。

何としてでも、あの少年の無実を掴み取る。

光のためではなく、自分のために。

彼を信じきるために。

重なった書類の最後の一枚。

記された名前は「長谷川 光」。

連なる平凡な経歴で見つけた明らかなる奇妙な点は、たった一つ。

キザキに関する情報が、載っていない点だけだ。

仁志は強い光りを瞳に宿すと、テーブルに投げた携帯電話を掴んだ。




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