そのとき、ふと哉琉の目に入ったのは別の書類だった。

サマーキャンプで催されるイベントの予算内訳の詳細が書かれたそれは、一度生徒会に上げて認可されて戻って来たもので、所定の欄にサインがされている。

生徒会会計のサイン。

「歌音・アダムス……」
「あ……そう言えば、逸見様のファンって……」
「なに?」

思わずと言った風に呟いた生徒は、いつの間にか静まり返った室内に、自分の声が響いてしまった事実にサッと顔を赤らめた。

まさか自分の独り言が注目されるとは思わず、戸惑いながらも続ける。

「あの、何の役にも立たないかもしれないんですけど……逸見様のファンが、長谷川のこと恨んでるって話を聞いたことがあって……」

尻すぼみに小声になって行く生徒の話を、最後まで聞く気はなかった。

哉琉の頭にはすでに光潰しのプランが構築され始めたのである。

訊ねたきり何やら思案する会長方筆頭に、周囲は怪訝そうな顔だ。

「あの、霜月さん?」
「いいこと聞いたよ。何も僕たちが直接手を下す必要はないんだ……『ゴミ虫』さえ消すことが出来れば、ね」

そう言って刻まれた笑みは、危うい色香が漂うものだった。




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