一様に視線を向けた先には、会長方のトップ。

震える肩で顔を俯かせる少年からは、鬼気迫るものがあった。

「長谷川、長谷川っ……潰さなきゃ。例え穂積様がアイツを気に入っていたとしても、僕らがそれを認めるわけにはいかないっ!」

その通りだ。

家柄も容姿も劣る、ただ成績だけがいいだけの存在に、自分たちが負けるだなんて認められない。

穂積を動かす光への嫉妬だけではなく、彼らの胸には傷つけられたプライドという問題もある。

碌鳴で基本的に重要視されるのは、第一に家柄。

次に個人の資質が来るのだが、もちろん最初は容姿である。

見目麗しい人間の有する、理性を超えた魅力を彼らはよく理解していた。

美しいだけで人は得をする、醜いよりは美しい方がずっといい。

視覚から作用する魔法は、政治であってもビジネスであっても変わらないもの。

遠くない未来、各分野の第一線で活躍することを目標とする碌鳴学院の生徒にとって、容姿の美醜は重要なポイントなのだ。

幼い頃から磨き努力して来た外見に固執するのは、学力において光に完敗しているという理由もあるのだが、彼らがそれを認めることはないだろう。

「でも、どうしますか?七夕のことで、僕たち会長方はマークされているはずです」
「その通りさ。この間、逸見くんに釘を刺されちゃったからね」

忌々しげに吐き捨てる哉琉に、生徒たちはどうしたものかと顔を見合わせる。

いくら計算して決定的な証拠を掴まれないよう注意していても、短期間に「制裁」を繰り返せば本当に不味い。

暫くの間は、会長方の活動は制限せざるを得なかった。

「霜月さん、一体どうやって長谷川 光を?」
「悔しいけど、今は動けないのが実情なんじゃ……」
「そんな弱気でどうするのっ!今潰さなきゃ……分かってるでしょ?アイツはたぶん、危険だっ、僕たちにとって害にしかならないっ!」

振り返ってみれば、予感はあったのだ。

転校して来た初日、光はすぐに生徒会書記と仲良くなった。

生徒会役員は生徒会長の任命によって選出される。

穂積が気に入った仁志と打ち解けたということは、後々光が穂積とも交流を持ってもおかしくはない。

名前だってそうだ。

食堂で自ら光に名を問うた穂積。

彼が他人の名前を気にすることなど、まずない。

あの質問は、前代未聞と言ってもよかったのに。

なぜこれまで、光を一攻撃対象としてしか見て来なかったのか。

完璧な美貌を誇る男との距離を、次第に縮めて行くことを察知出来なかったのか。

鈍感であった己を嫌悪することはない。

何故なら、すべては長谷川 光という存在のせいだから。




- 192 -



[*←] | [→#]
[back][bkm]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -