SIDE:穂積

「会長たち、いつの間に仲良くなったんだ?」
「は?」

言われた内容に、穂積は思わずその端整な面に間抜けな表情を浮かべてしまった。

あまりに心当たりのない発言だったのだから、仕方がない。

正面に座る後輩を、まじまじと見つめるも、相手は本気で言っているらしく、窺うようにこちらを見ている。

「どこをどう見たら、俺とゴミ虫の仲がよさそうに見える」

誤解もいいところだと返すも、納得は得られなかったようで。

「さっきのやりとり見てりゃ、誰だって俺と同じように思うっつーの」
「アドレス交換がか?」
「それだけじゃなくって……なんつーか、雰囲気って言うか」
「わけが分からない。説明する気はあるのか」
「うるせぇな、俺だってよく分かってねぇんだよ。けど、食堂で会ったときより明らか打ち解けてるだろ?」
「……」

指摘されて、振り返ってみる。

ファーストコンタクトは、散々だった。

ほぼ八つ当たりで仕掛けたのだが、強烈なしっぺ返しを貰ったのだからドローでいいだろう。

次に会ったのは学院の廊下、サバイバルゲームのゲスト宣言をしに行ったとき。

特段、転校生に対する自分の様子に変化はなかったはずだ。

変化が起きたのは、どこだ。

東棟の三階から飛び降りてきた細い体を受け止めた瞬間、自分は彼に対して「潰す」という意識を薄れさせていた気がする。

そこから更に記憶を現在に近づけて行けば、より当初の目的は姿を消して。

今はそう。

ついさっき光に言ったように、彼は守るべき対象になりつつあった。

と、そこまで考えた途端、穂積は何故こんなことを考えているのかと、半ば強引に思考を中断させた。

危うくとんでもない結論に行き着くところだった。

「俺たちのことはどうでもいい。ゴミ虫を面倒な立場に置いた最大の原因が俺だから、フォローに回っているだけだ」
「それだけか?まぁ、いいけど……」

話題を終わらせろと空気で訴えれば、追求の手は伸びて来なかった。

それにどこか安堵しつつ、空気を変え意味も兼ねて、彼を部屋に残した理由を口にした。

「仁志、今の学院の状況が分かっているな?」
「なんだよ、いきなり」
「質問に答えろ」

唐突な質問にやや面食らった様子ではあったが、金髪の首が縦に動く。

「ただでさえ行事がヤバイって言うのに、ドラッグの問題が出てるってことだろ」
「そうだ。学院の面子を考えれば外部に漏らすことも出来ない、俺たちで当面の調査をしなければならない現状にある」
「それがなんだって言うんだよ」
「生徒会内部で、揉め事を起こしている場合じゃない……そう言っている」

仁志の顔が、これ見よがしに強張った。

シャープな面に走る緊張が、対面からは容易に分かる。




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