碌鳴の病院。

早速与えられた情報を、すぐさま脳に叩き込んだ。

病院名を続けて問おうとすれば、一瞬早く穂積が言を紡いだ。

「それより、日曜のことを詳しく聞かせろ。まず、お前はどうして体育倉庫に行った」
「自分から入ったわけじゃありません」
「だろうな。イベント中は倉庫の施錠がされている」
「誰かに拉致られたか?」

穂積の返答を受けて、傍らの仁志が聞く。

「うん、最終的にはそうだったけど。俺があの辺に行ったのは、会長を体育館周辺で見たっていう話を、他の生徒たちがしてたからだよ」
「俺が?」

向かいに座る男の眉間が、意外な答えだと言うように寄せられて、光の方こそ怪訝な表情になった。

生徒たちの会話を盗み聞いたとき、確かに彼らはそう話していたのに。

互いに似通った顔であると気付いたとき、二人はほぼ同時にはっとした。

寄越される内容に見当をつけつつ、光はそろりと問うた。

「会長、その……あの時間、どこにいました?」
「……正門から本校舎に移動していた。俺のスタート地点は体育館前だったから、お前が拉致されたときには、とっくにその辺りから離れていたはずだ」

穂積もまた、若干言いにくそうに返す。

「なるほど、そういうことか」

疲れたような嘆息をする男に、まったく同感だ。

光も彼に倣って、上質なソファの背に体を預けた。

「あ?どういうことだよ、二人だけで納得すんなっ」
「少しは自分で考えろ」

投げやりな台詞に仁志が騒ぎだす前に、光は説明してやる。

「つまり、誰かが嘘の情報を流したってこと」
「はぁ?」
「俺はことあるごとに、会長がどの辺りにいたかっていう目撃情報を耳にしてたんだ。その目撃情報に従って会長を探していたら、体育館まで行き着いた。けど、その頃会長はまったく別のところにいた。誰かが俺を誘導するために、ワザと聞こえる声で嘘の情報を流してたんだよ」

気が付いてみれば、生徒たちの話し声は明らかにボリュームがおかしかった。

仲間内だけで話すには異様なほどの大きさで、少し離れた位置にいるこちらの耳に、確実に聞かせるためだったのだと今なら分かる。

簡単なトリックに引っかかってしまった情けなさと、くだらない真似をする学院の生徒たちに言葉もない。

同時に、自分が本当に多くの人間に疎まれている現実を、再確認させられた。

サバイバルゲームで分かっていたはずなのに、まるで釘を刺すように突きつけられれば、気分はぐっと下がる。

「なら、最初から七夕祭りで光を潰そうと、目論でいた奴らがいて、そいつらが体育倉庫に生徒三人をぶち込んでたってことか?」
「たぶんな。体育館の前まで行ったとき、後ろから殴られて気絶させられたんだ。で、気付いたら閉じ込められてたってわけ」

ようやく事件の仕掛けを理解したらしい学年四位に頷きながら、光は流れに乗って気になっていたことを穂積に聞いた。

「そう言えば、あの三人ってどうなったんだ?なんか様子がおかしかったみたいだけど」

何気なさを装って、極自然に述べる。




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