何を罪とする。




「っせーの!」

べしっ!と音を立てて、二枚の答案用紙が光の机に叩きつけられた。

答案返却最終日。

最後に返されたのは、仁志と約束をした数学だ。

点数が右上に書かれた表面を、互いに確認し合う。

結果。

「っしゃぁ!!」
「負けたっ!?」

僅か三点差で不良生徒会役員の勝利である。

光は心底悔しそうに仁志の答案を掴み取るや、穴が空くほど凝視する。

「絶対に採点ミスあるって!」
「往生際が悪ぃぞー、学年首位も対したことねぇなぁ?」
「仁志、ウルサイ、黙れ」
「うぉっ、黙れ追加かよ!」

大げさな反応は完璧に無視で、光はすべての問題を瞬く間にチェックするが、残念なことに彼の答案に採点ミスは見受けられなかった。

前髪で見にくい顔いっぱいに、不服の色を乗せて答案を持ち主に返す。

「……なんで出来てんの」
「四位舐めんなってことだろ?サボってっと、俺が首位取っちまうぞ」

自信満々にニヤリと笑われて、溜め息が出た。

冗談ではない。

首位転落をしてしまえば、今まで成績優秀者として与えられていた一人部屋の特権がなくなってしまう。

そんなことになれば、今以上に正体露見のリスクが上がってしまうはずだ。

「次はぜったいに負けないからな」
「数学だけは譲るかっつーの。ま、せいぜい頑張れ」

総合点数では光が上回っていると言うのに、妙な敗北感だ。

得意満面な仁志だったが、帰りのSHRを終えた須藤が出て行くと、さっさと荷物を片付け始めた。

今日は四時間目までなので、他の生徒たちは昼食を取ろうと食堂やら寮やらに向かったようで、早くも教室内に人影はまばらだった。

「おい、昼飯の前に生徒会室行くぞ」
「分かった、じゃあ何か買って寮で待ってるな」

食べたいものあるか?と聞くも、相手は違うと首を振った。

「アホ、お前も行くんだよ」
「え、何で?」
「この間のことで、話聞きたいんだと」

スクールバッグを持って席を立てば、さっさと歩き出す仁志。

その背中を追いかけながら、いよいよ来たかと思った。

この前は上手く掴むことは出来なかったが、今回は確実に情報を得なければならない。

事件のお陰で、生徒会の間でもインサニティが問題視されたはずだ。




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