掲示板の前に集まっていた生徒たちは、どうやら順位の確認に没頭していたらしく、生徒会役員様の一声にようやっと存在を認識したらしい。

バッと振り向くや驚愕を素早く収めて、彼のために身を飛び退かせる。

群集の中心に出来上がったスペースを、当然のように歩いて行く背中を追いながら、流石だなと呟いた。

掲示板の真ん前に立った金髪頭がじっと見つめるのは、生徒名が縦書きで載っている順位表の一番右。

一位の欄である。

トップの数字の下に記されているのは。

「……お前、マジで頭よかったんだな」
「らしいな。俺も今知った」

長谷川 光。

仁志のテンションが爆発したのは、次のときだ。

「って、どんだけだよお前っ!!俺がえらくそぶったのが馬鹿みてぇじゃねぇかっ!」
「自分で勝手に自慢しといて、人のせいにしますか」
「うっせ、一位とか意味分かんねぇ順位になりやがって、流石シルバーカードかこの野郎っ!」
「仁志、ウルサイ」
「やっぱビジュアル通りの学力だったな、あれか?寮に戻ったら一人勉強してるとか、そういうことか?」
「……俺のこと馬鹿にしてるだろ」

あぁ、五月蝿いのが始まった。

肺活量のままに言いたいことを言い続けるから、こちらとしては堪ったものじゃない。

はいはい、と適当な相槌を打ちつつ聞き流していた光は、不意に感じた気配に背後を振り返った。

「あ、須藤先生」
「おはようございます、長谷川君、仁志君。朝から五月蝿いですね、いい迷惑です」

さらりと言われた内容に、挨拶を返そうとした口が引きつった。

転校初日から思っていたが、どうも須藤の発言は教師らしからぬものが多い気がする。

ともすれば大人びた高校生と言っても通用しそうなほど、若々しく整った顔立ちをしておいて、吐き出されるのは辛辣なものばかりだ。

腹が立たないのは、あまりに平然と微笑を携えた表情で言われるからだろう。

反応には困ってしまうが。

担任の登場に、仁志は不機嫌そうに顔を顰めたものの、大人しく口を閉ざす。

あれだけはっきりと指摘されれば、彼とて黙る他なかったらしい。

「それにしても長谷川くんは、予想外と言おうか予想通りと言いましょうか」
「あえて深くは聞きません」

仁志と同じようなことを言われる予感を察し、先手を打つ。

だが、須藤はにこりと笑うと、光の頭にそっと手を置いた。

「優秀な子は好きですよ、頑張ったね」
「え……」




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