◇
学習能力とは、一体なんだ。
こちらが納得出来る解答を用意してくれるのならば、誰でもいい。
光は複雑な思いを込めて、掴みかかって来た生徒を地面に叩きつけた。
「何考えてんだよ、コイツら」
前回同様、ゲームの開幕を告げたのは穂積だった。
補佐委員に言い渡された出発地点の正門でも、生徒会長のよく通る声はスピーカーを通して聞くことが出来た。
頂点に立つ者に相応しく、威圧的ながら魅力溢れるスタート宣言。
その直後、光は美貌の主を求めて駆け出したのだが。
煉瓦畳みの上に転がせた生徒は、これで何人目だろう。
少年の背後には、まるで彼の軌跡とでも言うように、幾つもの人影が倒れ伏していた。
「正面突撃って、頭悪い……」
穂積とペアを組むと言う噂が学院に広まってから、覚悟はしていた。
何かしら、生徒たちが仕掛けてくるに違いないと。
ここ最近は仁志が離れていることも察知されているだろうし、尚更だ。
サバイバルゲームのときは、露骨に光を追い詰めたせいで、補佐委員会を始め生徒会信奉者は釘を刺されている。
滾る憎悪を抱えながらも行動に出られなかった期間は、腸が煮えくり返る思いだっただろう。
だから。
今回はもっと、狡猾に。
綿密な計画か何かを練って、密かに光を潰そうとするのではないか。
生徒会にバレることもなく、邪魔が入ることもなく。
確実にこちらを仕留める計画を。
そう予想していたのだが。
「ぜんぜん進歩してない」
とにかく人の居る場所に向かおうと、本校舎に向かって走っていた光に、馬鹿正直にも次々と襲い掛かって来たのだから、呆れもする。
学院の特色でもある端整な顔を歪めて、罵声と共に殴りかかる生徒たち。
次から次へと現れる相手に、まるでRPGでもやっている気分になる。
ラスボスに到達する前の、いらぬモンスター。
こちらのヒットポイントを消費して、最後の戦いを簡単には行かぬようにする演出だ。
ふっと浮かんだ考えに、光は歩みを再会させながら頬を緩めた。
「ラスボスって……会長にぴったりじゃん」
あの傲慢で口の悪い紳士笑顔の男。
完璧な容姿から吐き出される言葉の多くは、不遜なものばかりだ。
そんな男を捜し求めて足を動かしているのだから、彼のポジションは確実にラスボスである。
穂積の元へ辿りつけぬように、わらわらと出てくる生徒たちが雑魚キャラクター。
- 116 -
[*←] | [→#]
[back][bkm]