学習能力とは、一体なんだ。

こちらが納得出来る解答を用意してくれるのならば、誰でもいい。

光は複雑な思いを込めて、掴みかかって来た生徒を地面に叩きつけた。

「何考えてんだよ、コイツら」

前回同様、ゲームの開幕を告げたのは穂積だった。

補佐委員に言い渡された出発地点の正門でも、生徒会長のよく通る声はスピーカーを通して聞くことが出来た。

頂点に立つ者に相応しく、威圧的ながら魅力溢れるスタート宣言。

その直後、光は美貌の主を求めて駆け出したのだが。

煉瓦畳みの上に転がせた生徒は、これで何人目だろう。

少年の背後には、まるで彼の軌跡とでも言うように、幾つもの人影が倒れ伏していた。

「正面突撃って、頭悪い……」

穂積とペアを組むと言う噂が学院に広まってから、覚悟はしていた。

何かしら、生徒たちが仕掛けてくるに違いないと。

ここ最近は仁志が離れていることも察知されているだろうし、尚更だ。

サバイバルゲームのときは、露骨に光を追い詰めたせいで、補佐委員会を始め生徒会信奉者は釘を刺されている。

滾る憎悪を抱えながらも行動に出られなかった期間は、腸が煮えくり返る思いだっただろう。

だから。
今回はもっと、狡猾に。

綿密な計画か何かを練って、密かに光を潰そうとするのではないか。

生徒会にバレることもなく、邪魔が入ることもなく。

確実にこちらを仕留める計画を。

そう予想していたのだが。

「ぜんぜん進歩してない」

とにかく人の居る場所に向かおうと、本校舎に向かって走っていた光に、馬鹿正直にも次々と襲い掛かって来たのだから、呆れもする。

学院の特色でもある端整な顔を歪めて、罵声と共に殴りかかる生徒たち。

次から次へと現れる相手に、まるでRPGでもやっている気分になる。

ラスボスに到達する前の、いらぬモンスター。

こちらのヒットポイントを消費して、最後の戦いを簡単には行かぬようにする演出だ。

ふっと浮かんだ考えに、光は歩みを再会させながら頬を緩めた。

「ラスボスって……会長にぴったりじゃん」

あの傲慢で口の悪い紳士笑顔の男。

完璧な容姿から吐き出される言葉の多くは、不遜なものばかりだ。

そんな男を捜し求めて足を動かしているのだから、彼のポジションは確実にラスボスである。

穂積の元へ辿りつけぬように、わらわらと出てくる生徒たちが雑魚キャラクター。




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