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真夏の日差しに反射して、きらきらと輝いた一滴。
後から後から溢れ出でるそれに、喉の奥が焼け付いて声が出ない。
違う、間違っている。
言いたいのに、口元を動かすことさえ叶わない。
下手をすればまかり間違って嗚咽なんてものが零れてしまいそう。
無言に何かを感じ取ったのか、穂積は再びこちらを向くと、驚いたようだった。
それもそうか。
いきなり無様な容姿の自分が、はた迷惑にも泣き出したなら、驚きくらいする。
瞳から流れるものを止めなければ、きっと嫌がられるだろうな。
早く涙を拭わなければ。
分かっているのに。
身体は言うことを聞かず、白い肌を濡らし続けた。
だってこんな自分に、そんなにも優しい言葉を。
認めてくれるフレーズをくれるだなんて。
信じてしまいそうだ。
穂積の言うことを。
自分などでも、育てて行ける気がしてしまう。
愚かだろうか。
無謀だろうか。
それでもいい。
少しくらい望みがあるのなら。
認めてくれる人がいたのなら。
光は小さく、頷いた。
「育てて……みる」
音色は消えてしまいそうなほどか細かったけれど、確かに穂積の耳に届いたらしい。
対面の男は、その完璧な面をどこまでも優しく緩めて、微笑んだのだった。
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