お金持ちのご子息なのだから当然のはずだが、一番近くにいる仁志はやたらと強かったので比べてしまいそうになる。

ふと引き合いに出してしまった金髪の相手に、光の顔が僅かに曇った。

折角忘れていたのに。

胸の息苦しさを振り払うように、意識的に口を動かした。

「よくあるんですか、その……今みたいなの」
「どうかな」
「どうかなって……」

曖昧に笑って誤魔化そうとする歌音からは、達観した者特有の余裕があった。

呼び出しはきっと一度や二度というレベルではないのだと察する。

「逸見先輩は、知ってるんですか?」

会話をしたのは一回だけだが、彼が歌音のことを大切にしていることはすぐに分かった。

もしこの事実を知っていれば早々に手を打っているはずだが、慢性的に呼び出しがあるのならば、歌音が彼に言っていない証拠だ。

案の定、歌音はやんわりと笑った。

「なんでっ……」
「さっきの子たちはね、逸見のファンなんだ」

遮るように紡がれた歌音の言葉は、どこか寂しさを帯びていて、光は思わず口を噤んだ。

碌鳴で絶大な人気を誇る生徒会だが、何もファンがいるのは彼らだけではない。

一般の生徒でも見目が良ければ十分な人気を博している。

逸見は補佐委員会の委員長なのだから、ファンが付いていることに何ら不思議はなかった。

だからこそ、疑問に思う。

逸見のファンならば余計に逸見に報告するべきだ。

自分たちが慕う相手から怒りを買えば、もう二度と馬鹿な真似などしないはず。

相手は学院内でもしっかりとした力の持ち主なのだから、簡単だろう。

勿論、生徒会役員である歌音が直接裁くのが一番いいのだが。

不満そうな光に、相手は容姿に見合わぬ成熟した微笑をもらした。

「彼らは、僕と同じなんだよ……長谷川くん」
「同じ?」

何が同じなのか。

姿形も異なれば、メンタル面でも大きく劣る彼らと、歌音の何が同じだと言う。

むしろ真逆だ。

要領を得ずに首を傾げる。

歌音の言葉は少し、難し過ぎた。

疑問符に満ちた少年の表情に気付かないはずもないのに、歌音は構わず続けた。

「悲しいね。僕たちは同じなのに、同じだからこそ蹴落とそうとする」

何を言いたいのか、まるで分からない。

謎かけのような台詞。

それでも、痛ましく微笑む歌音の姿は、ひどく儚げで美しくて。

透明感に溢れた小さな存在は、掴めば消える夢幻を思わせつつも、きらきらと輝いて見えた。




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