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駄目だ。
頭が混乱しかける。
だってそうだ。
目の前には不思議な現象を引き起こした、サンタ姿の男。
目の前には一流の雪像を思わせる、トナカイが引くそり。
これにあと一つ。
あと一つプラスされてしまったら。
「さて、お前の名前は?」
「い、おり」
「そうか、衣織。今いくつだ?」
「……十七」
「子供だな」
面と向かって言われれば反発したくなる程度には、精神的にも社会的にも子供だ。
確認をした相手は、そりの座席を探ると、何やら大きな袋を取り出した。
まるで、絵本に出てくる例のプレゼントがつまった袋のよう。
「で、お前は何が欲し……」
「ストップ待って一時停止頼むからっっ!!」
「……なんだ」
いいところで寸止めを食らったという様子で、顔をしかめる男。
ドクドクと今年一番の騒がしさをみせる心臓を抱え、恐々見上げる。
どうしよう。
まさか、こんなことになるなんて。
こんなものに遭遇するなんて。
おみくじも、十二正座占いも、血液型選手権でさえ予想していなかったハプニングに違いない。
余計な思考が脳裏を廻り、少年の正気を砕く。
聞けば後には戻れないのに、唇が紡いだ。
「あんた、いったい何者?」
向かい合った彼は、あぁ名乗っていなかったか、と前置きをしてから、それを口にした。
衣織が気付きかけていた、正体を。
「関東エリア東京二十三区担当サンタクロース、雪だ」
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