思惑。
SIDE:露草
「お帰りなさいま……露草様っ!?」
「一体、何がっ!?」
数ヶ月ぶりに姿を現した主に、衛兵も下女も目を剥いた。
腕から血を流し全身に傷を負った総領主に、手当てをしようと駆け寄るが、露草は歩みを止めず屋敷の奥へと進んで行く。
追い縋る使用人を振り返ることなく、彼は迷わず目的の部屋までやって来ると、破壊しようやという力で扉を蹴り開けた。
「葉月っ!!」
「露草様っ!?お帰りに……どうなさったのですかっ!」
主君の惨状に葉月は執務机から立ち上がった。
腕の立つ露草がここまで傷を負った姿など、今まで見たことがない。
すぐに手当てをしようとした彼を、露草は怒りに満ちた瞳で睨み付けた。
「どういうことだ?」
「露草、様?」
意味を捉えかねて怪訝な顔を見せる右腕に、総領主は眼光を強めた。
「なぜ、私兵が勝手な動きをしているっ!?」
露草の言葉に葉月は瞳を困惑に揺らした。
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