今回の襲撃でレジスタンスの戦力は完璧に削がれてしまった。

予定していた武力制圧も不可能だろう。

それならば、実力のあるソウを残した方が効率的である。

翔よりもソウの方が強いということは、一度対峙したことで分かっていた。

私兵との戦闘を続けて生き残る可能性があるのは翔ではない。

ソウだ。

彼の姿を見た瞬間に、衣織は浮かび上がった仮説を打ち消すことが出来なかった。

タイミングの良過ぎる私兵の襲撃。

たった一人でセカンドブロックへ現れたソウ。

「私兵はどうして、アジトの場所を知っていたんだ?」

青年の眼が驚愕と焦燥に見開かれた。

衣織が意味するところを理解したのだ。

「お前、本当に雪とはぐれたのか?」
「ちょっと待て、違うっ!誤解っ……」
「誤解なものですかっ!!」

鋭い叫びに、全員がソウの背後に現われた人物に目を向けた。

蒼白な顔を怒りに満たした繊細な麗人が、三日月形の剣をソウに突きつけていた。

胸を一線した傷からは鮮血が流れ続け、着衣をしとどに濡らしている。

僅かに震える右足は立っていることも苦痛なはずだ。

しかし、満身創痍の中、翔の瞳だけは煮え滾るような激情が燃え上がっていた。

「翔っ?どうしたっていうんだよ!?ソウから剣を退いてっ。一体なんなんだよっ!!」
「ラキ、よく聞いて下さい。彼はソウではありません」
「え?」

翔の声が僅かに掠れたのは、湧き出す思いを堪えるためか。

何かを振り切るようにきつく目を閉じた後、翔はその名を吐き捨てた。

「信用していたのに。ソウ……いいえ、総領主、露草っ!!」




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