「ラキっ!」

ホールに響いた聞き慣れた声に、ラキは弾かれたように顔を上げた。

「ソウっ!?」

緊急用とは別の、セカンドブロックの正規の出入り口に現れたのは、褐色の肌の青年。

扉に寄りかかり肩で息をするソウの腕は、赤黒い液体を滴らせ、頬や足にも銃弾が掠めた痕がある。

彼の有様に目を見開いた。

すぐに手当てをするべく、彼への一歩を踏み出しかけた少女は、背後のざわめきに思わず動きを止めた。

振り向けば、仲間たちも更に背後――ファーストブロックからの通路に目を向けている。

「なに?」

低い騒々しさは皆が一様に抱く、畏怖の念を伝えて来る。

そうしてホールに集まっていた人の群れが左右に割れるや、ラキは愕然とした。

人垣の中央に進み出た人影。

「衣、織……?」

確認せずにはいられなかった。

ソウなどとは比べ物にならない。

鼻腔を刺激する鉄の臭い。

まるで赤い絵の具を頭から被ったようだ。

全身を血で濡らした少年が、そこにはいた。




- 89 -



[*←] | [→#]
[back][bkm]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -