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「ラキっ!」
ホールに響いた聞き慣れた声に、ラキは弾かれたように顔を上げた。
「ソウっ!?」
緊急用とは別の、セカンドブロックの正規の出入り口に現れたのは、褐色の肌の青年。
扉に寄りかかり肩で息をするソウの腕は、赤黒い液体を滴らせ、頬や足にも銃弾が掠めた痕がある。
彼の有様に目を見開いた。
すぐに手当てをするべく、彼への一歩を踏み出しかけた少女は、背後のざわめきに思わず動きを止めた。
振り向けば、仲間たちも更に背後――ファーストブロックからの通路に目を向けている。
「なに?」
低い騒々しさは皆が一様に抱く、畏怖の念を伝えて来る。
そうしてホールに集まっていた人の群れが左右に割れるや、ラキは愕然とした。
人垣の中央に進み出た人影。
「衣、織……?」
確認せずにはいられなかった。
ソウなどとは比べ物にならない。
鼻腔を刺激する鉄の臭い。
まるで赤い絵の具を頭から被ったようだ。
全身を血で濡らした少年が、そこにはいた。
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