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ソウの言葉に衣織は驚いた。
ラキの右腕のように動いている翔が、まさか三ヶ月前に入ったばかりとは。
「参加した時期はあんまり関係ないんだよ。翔もソウも、レジスタンスの幹部ってみんなが認めてる。アタシには勿体無いくらいの仲間だよ」
身内を自慢する少女は、本当に得意げで、太陽のようにニッカリと微笑んだ。
この笑顔が、多くの人間の心を惹きつけるのではないだろうか。
問答無用で嬉しさが湧き上がるような、見ているこちらまで元気をもらえる笑顔。
ついて行きたい、支えになりたい、そう思わせる引力が彼女にはある。
商人としてだけでなく、人間的にも未熟なラキが、リーダーを務めていることに疑問を感じていた衣織は、彼女への見解を改めた。
リーダーとしての素質は十分にある。
しかし、その明るい表情がふっと陰った。
「だから、自分が少し情けなくもなるんだけどね」
落とした言葉はひどく弱々しく響く。
たった一言の自嘲に、何と言おうとしたのか。
「ラキ、それは……」
先に続くはずだったセリフは、けたたましく叩かれた扉の音で掻き消された。
尋常ではないノック音に、一番近かったラキが扉を開ける。
「リ、リーダー!!」
来訪者の男は焦燥と混乱に支配された形相で、少女の細い肩に縋りついた。
衣織たちは知らないが、きっとレジスタンスのメンバーなのだろう。
明らかな異常に、ソウも立ち上がる。
「どうしたの?何があった!?」
「た、大変なんだっ。し、しへ……私兵がっ……!!」
どもる男にラキの後ろからソウがしっかりとした声で応じた。
「落ち着け。いいか、ゆっくりしっかり言え。どうした?」
だが、男の次の言葉で部屋にいた全員の顔色が変わった。
「私兵が、私兵が攻めて来たっっ!!」
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