リーダーの資質。




「いやさ、ラキの命の恩人とラキを蹴りやがったクソガキが、同一人物なんて思わねぇだろ?」

衣織たちの部屋のソファに座ると、ソウは愉快そうに笑いながら説明する。

ラキに傷を負わせた相手が、黒髪黒目の少年と聞いていたソウは、すぐにそれが衣織だと気づいたそうで。

激情のまま切りかかってみたものの、後から武力抗争時の戦力として雇った万屋であり、またリーダーの命の恩人だということを聞かされ驚いたのだとか。

「ちょっと待て。俺、命の恩人とか覚えねぇんだけど」

心当たりのない肩書きに、衣織は戸惑ってしまう。

「ペンダント返して貰いに行ったとき、私兵に銃撃されたでしょ?お前がアタシを抱えて飛び退かなきゃ、蜂の巣だったもん。命の恩人だよ、本当にありがとう」

言われて「あぁ、そういえば」とようやく思い至る。

無意識の行動だったので、お礼を言われてもピンと来ないのだが。

けれど、雪とのやりとりで室内は微妙な雰囲気で満たされていたので、彼らの訪問はありがたかった。

視界の端に映る術師の表情は、未だ硬いままだったが、フォローをする精神的なゆとりは持ち合わせていない。

「分かるまで、なんでラキを蹴り飛ばしたガキがここに居るんだ?って思った」
「あんた、ちょっとクドくねぇ?」
「そりゃ、我らがリーダーを攻撃したんだから当然だろ。けどまぁ、助けてくれてありがとな」

嘯く口調とは対照的に、最後のセリフは真面目な表情で言われ、衣織は身じろいだ。

本当にラキのことを大切にしているのだと、その瞳が物語っている。

「リーダーとか、やめてよ。アタシは何にもしてない」

苦笑するラキに、ソウは驚いたように目を丸くする。

「ソウや翔がレジスタンスに入ってくれなきゃ、武力抗争も具体化しなかったよ」

彼女の物言いに、衣織は首を傾げた。

まるで当初は、ソウも翔もメンバーでは無かったかのような口ぶりだ。

疑問が顔に出たのか、ソウが説明してくれる。

「俺がレジスタンスに入ったのは二ヶ月前なんだ。つまり、新人」
「新人でその態度のデカさはありえねぇだろ」
「生まれつきだ、ほっとけ」

むっとした様子を見せるが、彼はすぐに笑顔になる。

対峙したときは分からなかったが、ソウという男は常に楽しそうに笑う、陽気で気のいい青年だった。

整った顔立ちも相まって、女性にはさぞかしモテるだろう。

それからそっと雪に視線を移す。

あれほど容姿が秀でてしまうと、言い寄るには相手にもよっぽどの美貌と自信が必要になって、大抵の人間には観賞用になってしまうのだ。

その点では、ソウの方が馴染みやすく好意を集めやすい。

失礼な見解を抱いている衣織に、ラキが話しを続ける。

「レジスタンスの活動って、今まではそこまで派手じゃなかったの。私兵相手に喧嘩売るなんてなかったし。けど、ソウが入ってくれてみんなの意識が高まったんだ」
「翔のおかげでメンバーも増えたしな」
「もしかして、翔さんも新人とか?」
「正解。俺より一ヶ月だけ先輩」




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