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「あるよ。ネイドには国軍がないんだ。だから、総領主の私兵が実質それになるんだけど、他国と比べるまでもなく人数は少ない。それにアタシ達の目的は政府の発足だから、露草に承諾させればいいだけなの。真っ向から私兵と殺り合う気はない」
街で襲ってきた茶色の服の集団が、私兵というやつなのだと理解する。
更に話しを聞くと、当面の間は総領主という位を残し、少しずつ政府として確立して行く狙いらしい。
武力抗争というから、完全に叩き潰すのかと思ってしまった。
「だから、お前らの力を貸して欲しいんだ」
話が最初のラキのセリフと繋がった。
総領主との抗争時に参戦する力になってくれ、ということなのだ。
「嫌だ、他当たれよ」
「お願いっ、アタシらを助けると思って……」
にべもなく跳ね除けた衣織に、少女は泣き出しそうな顔を作った。
「アタシらにはこの国だけなんだ。国が滅びるのを黙って見てなんかいられないんだよっ。今は少しでも多くの戦力が必要なんだ。頼むよっ」
「俺たちにそんな力はないし、参戦する理由もないだろ。大人しく傭兵でも雇えよ」
「だって、そっちの男は術師だろっ?術師がいてくれたら、みんな心強い」
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